畳は日本で古来より親しまれている伝統的な床材(ゆかざい)です。
生活様式の変化によって畳のない家が増えてはいますが、それでも和室でい草の香りをかぐと誰もが懐かしい気持ちになり、癒されるのではないでしょうか。畳にはどんな歴史があり、どのように変化してきたのでしょうか。また、現代で人気の畳にはどのような種類があるのかも気になりますよね。
今回は畳の歴史とその利点、現代の畳のトレンドなどについて詳しくご紹介します。
畳とは?
畳は、畳床(たたみどこ)と呼ばれる畳の芯に、い草を編んで作ったゴザの部分である畳表(たたみおもて)を貼り付け畳縁(たたみべり)で囲んで作られた床材です。
生活様式が変化した現在でも、ファミリータイプのマンションでは当然のように畳敷きの和室が設けられていたりと、いまだに日本では広く親しまれています。
畳の歴史
畳の歴史は非常に古く、日本人の生活に欠かせない床材として長く愛されてきました。
いったいいつ頃、どのようにして畳は誕生したのでしょうか。
畳の起源は縄文時代?
なんと畳の起源は縄文時代にまでさかのぼります。
縄文時代~弥生時代の遺跡からは、住居の床に茣蓙(むしろ)や筵(ゴザ)を敷いていた形跡が多く発見されており、その敷物が畳の起源と言われています。
畳は、古代から世界中に自生していたい草を編むことで1枚の敷物にするという、昔の人たちの生活の知恵から生まれたものでした。
はじめは敷物を重ねていただけだったのが、徐々にバラバラになるのを防ぐために縁を縫い合わせるようになり、現在の畳に近い形になっていったそうです。
現存する世界最古の畳は東大寺に
世界最古の畳は、奈良時代に建てられた東大寺の正倉院(しょうそういん)で発見された「御床畳(ごしょうのたたみ)」と呼ばれるもので、聖武天皇が就寝時に使用されていたベッドのような木の台の上に敷かれていたものが世界最古の畳と言われています。
この頃の畳は、まだ厚みのある頑丈なものではなく折り畳みのできる敷物状のものだったようです。
日本の日本神話を含む歴史書「古事記(こじき)」にも記述
畳は、この頃に作られた日本最古の書物と言われる「古事記」にも登場しています。
ヤマトタケルが海の神の怒りを買ってしまい、海が大荒れになった際、彼の妻が海の上に何枚もの畳を敷いて神の怒りを鎮めるために会いに行く、というエピソードがあります。
これらを総合すると、すでに奈良時代には畳が普及していたことがわかるかと思います。
書院造(しょいんづくり)とともに普及
平安時代には貴族の間で寝たり座ったりする時や、来客をもてなすためのものとして『 畳 』が使われました。
この頃の畳は、身分によって大きさや厚さ、縁の色が違っていたそうです。
その後、書院造が普及する鎌倉時代から室町時代には、床全体に畳を敷き詰めるいわゆる現代の「畳敷き」のスタイルが一般的になります。
そして桃山時代には町人に、江戸時代中期以降には庶民の間にも畳が普及し、現代に繋がっていきました。
畳の種類の移り変わり
このようにはるか昔にさかのぼる畳の歴史ですが、一口に畳と言ってもその形や使われ方は時代によって移り変わってきました。
縄文~弥生時代には、茣蓙(むしろ)や筵(ゴザ)のようない草の薄い敷物が生まれ、奈良時代には縫い合わせ縁を付けたものになり、平安時代になると貴族の階級を表すために厚みを出したり豪華な素材で縁を付けたりとバリエーションが時代を重ねるごとに増えてきました。
また、鎌倉時代以降に「畳敷き」が浸透すると、持ち運ぶ必要がなくなり次第に分厚く重い畳が主流になりました。
さらに茶の湯文化とともに浸透し、現在の畳の形が確立されました。
畳の特徴と利点
日本では、はるか昔から畳が親しまれてきたことがわかりました。
では、なぜこれほど長く畳が愛され利用されてきたのでしょうか。 畳の特徴とその利点についてみていきましょう。
和室に畳が敷かれている理由は?
日本では和室といえば畳敷きというのが常識ですが、和室に畳を敷き詰めることが一般的になったのは、畳が日本の風土や気候、生活様式に適しているためです。
例えば、日本人は昔から家では素足で過ごすため、板の間よりも足に負担の少ない畳が好まれました。また、正座など床に直接座ることが多いのも畳が選ばれた理由の一つと考えられます。
断熱性や調湿性がある
畳にはフローリングにはない利点がたくさんあります。
そのうちのひとつが断熱性と調湿性です。
畳は何本ものい草を編みこんで作っているため、その1本1本が空気を含み床下からの冷気を遮断して、夏は涼しく冬は暖かいという効果が生まれています。また、い草自身が空気中の水分を取り込み、湿度を調整する働きをしているため、一年中心地よい空間になるのです。
程よい硬さとクッション性
畳には程よいクッション性があるため、素足でも心地よく過ごせます。
い草の香りを感じながら畳の上に横たわるのも最高に気持ちいいですよね。
また、クッション性のおかげで足音などを吸収してくれる防音効果もあるので、マンションなどでも安心です。
畳にデメリットはある?
逆に畳ならではのデメリットも以下のようにあります。
- 自然素材ゆえカビや虫、日焼けなどを予防するためのお手入れに手間がかかる
- 柔らかい素材でできた畳は傷がつきやすく、ペットのいる家ではすぐに傷んでしまうこともある
- 家具を置いていた場所が凹んだりするため、向きを変えたり表替え(畳表を張り替える)をするなど、定期メンテナンスが必要
現代畳の特徴とトレンドをご紹介
畳の特徴や利点、デメリットなどを見てきましたが、最近ではメリットを生かしつつデメリットを克服した新素材のものや、洋室にも合うおしゃれなものなど、様々な畳が取り入れられています。
ここからは現代の日本で人気となっている畳の特徴やトレンドをご紹介します。
スタイリッシュな琉球畳はメリットいっぱい
琉球畳は、「七島い(しちとうい)」という植物で作られた縁のない半畳サイズの畳で、市松模様に組んで置くことが多くモダンでおしゃれな印象を受けます。
縁がないため部屋がより広く見え、一般的な色以外のカラフルなカラー畳もあるため好みに合わせて選ぶことができるため、近年日本の和式文化を取り入れたホテルや若年層の間にも人気の畳になります。
模様替えにもピッタリ!カラフルな置き畳
最近では、い草を染めたカラフルな置き畳も人気です。
子どものプレイマットのように正方形のユニットになっているので、好きな場所に好きなだけ敷いたり外したりすることができるため、和室のない家でも気軽に取り入れることができます。部屋の模様替えにアクセントとして使うのもおすすめです。
い草以外の新素材も
従来のい草の畳にあったデメリットをなくすため、またい草の生産量の減少を補うために新たな素材の畳が誕生しています。
樹脂をストロー状にしてい草に見立てたものや、和紙をこより状にして樹脂コーディングしたものなどがあり、い草の香りや調湿効果こそありませんが、丈夫でカビや虫に強くお手入れが楽というメリットがあります。
従来のい草の畳にあったデメリットをなくすため、またい草の生産量の減少を補うために新たな素材の畳が誕生しています。
樹脂をストロー状にしてい草に見立てたものや、和紙をこより状にして樹脂コーディングしたものなどがあり、い草の香りや調湿効果こそありませんが、丈夫でカビや虫に強くお手入れが楽というメリットがあります。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、日本古来の床材として昔から変わらず親しまれている畳の歴史とその特徴や利点、また現代の畳のトレンドなどについて詳しくご紹介しました。
畳には驚くほど長い歴史があり、平安時代以降その基本的な形は現代まで変わらないことがわかりました。
それだけ日本特有の生活様式に合った床材だということですね。 従来の畳以外にも洋風建築にもなじむおしゃれでモダンな畳も様々あることがわかったので、気になった人は検討してみてはいかがでしょうか。