襖(ふすま)と言えば、昔ながらの和室を仕切るための建具(たてぐ)として誰もが思い浮かべることができるでしょう。
しかし、襖にもその構造や襖紙の素材などにより種類がたくさんあるという事を知っている人は少ないかもしれません。
今回は襖の種類や襖紙を比較表を用いながら簡単にわかりやすくご紹介。また、その中でもおすすめの和紙襖紙(わしふすまがみ)について詳しい説明と家美装のおすすめする和紙襖紙をいくつかご紹介させていただきます。
襖の種類
襖には、木の素材でできた本襖と戸襖、軽量素材によるダンボール襖、発泡スチロール襖の4種類があります。
それぞれの特徴をまとめた表はこちら。
襖の種類 | 骨組み | メリット | デメリット | 張り替え可否 | 張り替え時期 | 価格 |
本襖 | 「組子」と呼ばれる、木材を格子状に加工した土台を使用 | ・伝統的な引き戸式 ・通気性に優れている | ・何度でも張り替えができる高価である | 何度でも可 | おおむね10年 | 高め |
戸襖 | ベニヤ板を土台として使用 | ・引き戸式とドアのような開閉タイプもある | ・重い | ・縁はベニヤ板に接着されているので外せ重ね張りのみ可 | おおむね10年 | やや高め | 普通~
ダンボール襖 | ダンボール紙を土台として使用 | ・量産タイプの襖 | ・とても軽量・縁が外せず張り替えは難しい | 基本不可 | - | 安価 |
発泡スチロール襖 | 発泡スチロールを土台として使用 | ・量産タイプの襖 | ・とても軽量・縁が外せず張り替えは難しい | 基本不可 | - | 安価 |
ここからはそれぞれの特徴をより詳しく見ていきましょう。
本襖(ほんぶすま)
本襖は和襖(わぶすま)とも言われる、昔ながらの伝統的な襖です。
構造上反りやねじれに強く、日本の気候に最も適した襖と言え、何度でも張り替えて長く楽しむことができるのが魅力です。
手作業で手間をかけて作られるため量産ができず高価ですが、骨組みを長く使えることや襖紙の張り替えも何度も行えることを考えると最もコスパが良い襖と言えます。
戸襖(とぶすま)
戸襖は組子の代わりにベニヤ板を使用した襖です。
本襖より重量があり丈夫なことから部屋の間仕切りに適しており、マンションのリビングなど洋室と和室の境目に使用されることが多いふすまになります。
板の上に襖紙を貼ったシンプルな構造ですが、本襖と異なり襖の縁や枠が外せないため襖紙の張り替えは重ね張りのみとなります。
ダンボール襖
ダンボール襖は、襖の芯材としてダンボール紙を何枚か張り付けて層にし、その上にアルミ箔、襖紙を張り重ねた襖になります。
軽くてコストが抑えられる手軽さが魅力ですが、基本的に張り替えができないため枠組みごと入れ替えることが多いものになります。
発泡スチロール襖
発泡スチロール襖はダンボール襖と同様に発泡スチロールを下地にしてその上にチップボール紙、アルミ箔、襖紙を張り重ねた襖になります。
ダンボール襖と同じく、軽くてコストが抑えられる反面、強度がやや弱く張り替えができないなどの難点があります。
襖紙の比較
襖に張る襖紙の種類についても、一般的なものとして『織物襖紙』と『和紙襖紙』に大別されます。
また、それぞれの中でも種類があり、その特徴をまとめた比較表は以下の通りです。
襖紙の種類 | 特徴 | メリット | デメリット | デザイン | 価格 | 張り替え年数 |
織物襖紙 | ・麻 / 絹 / 木綿などの天然繊維の高級品から普及品まであります。 | ・和紙に繊維を織り込んだ襖紙和紙に比べて破れにくく耐久性が高い | ・汚れがしみになりやすい ・量産できない | ・施工に技術がいる無地から豪華な柄が入ったもの、ラメ入りなど幅広いデザインがある | 普通~高め | 5~20年以上 |
手漉き和紙 | 手で一つ一つ丁寧に漉いて作られた高級和紙の襖紙(本鳥の子と呼ばれる | 上品な和紙の質感、経年による風合いの変化が魅力 | ・ ・水に弱い ・量産できない | 職人技のため高価無地や控えめな地模様入りなどが多いが、後から加工や絵付けをしたものまである | 高め | 5~10年 |
機械漉き和紙 | 機械漉きで作られた和紙襖紙。(鳥の子、上新鳥の子、新鳥の子の順でランクがある | ・ ・機械漉きのため量産が可能 | 手漉き和紙に近い質感のものから、遊び心のあるデザインなどバラエティ豊か水に弱い | 安価なものは風合いが劣る手漉き和紙同様のものから、プリンターで印刷した総柄まで幅広いデザインがある | 安価~普通 | 3~5年 |
コスパが良い和紙襖紙は?
当社、家美装に張り替えのご相談に来られる多くのお客様から「和紙襖紙といっても種類やデザイン、価格などに幅があるため、何が良いのか悩んでしまう。」と言った声を多くいただきます。
私たちは、お客様のご要望・ご予算をお伺いしお部屋の確認をさせていただき状況を加味してから襖紙のご提案をいたします。
その中で和紙の襖紙が良いとなった場合、オススメしているのが『手漉き和紙の襖紙』です。
手漉き和紙は、和紙襖紙の中で最も手間がかかっているため高価ですが、その手漉き和紙でしか出せない高級な見た目や質感はお部屋の雰囲気までグレードアップしてくれます。
また、手漉き和紙は丈夫で耐久性が高いため張り替え期間も長く、本襖に手漉き和紙の襖の組み合わせは、非常に丈夫で経年劣化も少なく長い目で見るとコスパが良い組み合わせと言えます。
和紙襖紙のデザイン紹介
近年、日本の住宅ではいわゆる日本家屋ではなく西洋建築で造られる家屋が多く、洋室のお部屋が増えていることから、従来の純和風のデザイン以外にも現代の建築様式に合わせた様々なデザインの襖紙が製造されるようになりました。
ここからは、手漉き和紙の本鳥の子の襖紙、機械漉き和紙の襖紙、それぞれの襖紙のデザインを紹介していきます。
手漉き和紙の襖紙デザイン
和紙の襖紙は、元々原料による色合いが鶏卵の殻のような淡い黄色をしていたことから「鳥の子」と名付けられました。
中でも丁寧に手漉き和紙に用いられたものが「本鳥の子」で以下5つのランクに分けられます。
- 雁皮紙(がんぴし)を使う特号紙
- 雁皮と三椏(みつまた)を使う一号紙
- 三椏を使う二号紙
- 三椏とパルプの三号紙
- ニラ麻とパルプの四号紙
※❶が最も上質な紙となり。上質なものほど紙質が強くなります。
本鳥の子
本鳥の子の襖紙の中でも一番シンプルな鳥の子色の無地襖紙です。
天然色だからこそ、室内に自然になじみます。
モダンデザイン ①
和紙の王様とも言われる本鳥の子の中でも、柄入りでより高級感のある襖紙です。
和紙を漉く時に異なる色の紙料を漉き入れることで、雲のような繊細な地模様の襖紙に仕上がります。
モダンデザイン ②
越前和紙の本鳥の子を大胆にデザインした市松模様の襖紙です。
お部屋のアクセントとして、シックにもモダンにもなります。
最近では、アニメ「鬼滅の刃」の主人公が羽織っている上着も市松模様で襖紙の方でも人気に拍車がかかっています。
モダンデザイン ③
こちら手漉き和紙に絞り加工を施した水玉模様のような絞り柄が特徴の襖紙です。
手漉き和紙に絞り加工を施した和紙はインパクトがあり、かわいらしくもモダンなデザインで年齢問わず人気のデザインになります。
機械漉き和紙の襖紙デザイン
一方より一般的な機械漉き和紙では❶〜❸までのランクに大別されます。※❶が最も高価
- 「鳥の子」・・・本鳥の子に近い質感で最も上質
- 「上新鳥の子」・・・平均的な価格で機械漉き和紙の中で最も普及している
- 「新鳥の子」・・・再生紙を利用しているため廉価
それぞれに値段や質感、デザインに特徴があります。
「新鳥の子」デザイン
伝統的な引手帯模様を大胆に桜と紅葉でアレンジしたデザインです。
新鳥の子の襖紙は、薄く下地が透けるため、裏に別の紙を裏打ちしているのが特徴。
「上新鳥の子」デザイン
後加工による模様付けがしやすい上新鳥の子は、思い切ったデザインのものも豊富にあります。
洋室にはもちろん、シンプルな花柄などは和室の模様替えにもおすすめです。
「鳥の子」デザイン ①
機械漉き和紙の中で最も上質な鳥の子の襖紙に地模様が施されたやわらかい印象の襖紙です。
ナチュラルで温かい風合いの襖紙は、木目調や洋風住宅など洋風にも和風にも自然になじむためオススメの襖紙になります。
「鳥の子」デザイン ②
鳥の子襖紙をやさしいグラデーションに染め分けた個性的な襖紙です。
和室・洋室問わず使え、お部屋をモダンな印象にしてくれます。
「鳥の子」デザイン ③
機械漉きの和紙ならではの繊細な柄が印刷された襖紙です。
さまざまなバリエーションがあるので、好みや部屋の雰囲気に合わせて選べます。
「鳥の子」デザイン ④
鳥の子の襖紙ならではの思い切ったインパクトのある総柄もあります。
張り替えが可能な襖紙だからこそ、個性的な派手柄で遊んでみるのも良いですね。
「鳥の子」デザイン ⑤
4枚1組の襖全体を使った大胆な絵柄が特徴のゴージャスな襖紙になります。
大きな面積ならではの絵画のような迫力があるので、店舗などにおすすめの襖紙デザインです。
襖紙張り替えのポイント
先にご紹介したとおり、襖は種類が様々。
襖紙の張り替え方法や注意点も材質によってそれぞれ異なります。
DIYでかんたんに張り替えができるキットなども販売されています。
DIYで襖紙の張り替えは可能?
DIYで襖紙の張り替えは可能です。
まずは襖の種類の確認をし、それに合った襖紙を選ぶことが大切です。
襖紙の張り替えには、はじめに取っ手や枠を外し、最後に組み直す作業があり、木枠を傷つけないためにも専用の道具を準備しましょう。
また、かなり手順が多く時間もかかるので、あらかじめ段取りやコツをメモしておくことをおすすめします。
専門店に依頼するなら
DIYでの襖紙の張り替えについて説明しましたが、専用の道具が必要だったり、時間がかかったりと思いのほか大変です。
少しでも心配がある場合は、当社のような襖の張り替え専門店に依頼することをおすすめします。
専門店なら襖の種類の見極めからデザインの相談、プロの技術による施工まですべて任せられます。
さらには、張り替えで失敗することはなく、アフターフォローも万全な専門店も多いので安心です。
お気に入りの襖紙で長く楽しむためにも、専門店での張り替えを検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
襖や襖紙には多くの種類があり、そこには長く続く職人技や専門店の技術・知識が生かされています。
襖の張り替えを検討している方や家に新たに和室を造りたいとお考えの方は、幅広い選択肢から住環境や嗜好に合わせて選ぶことができるでしょう。
襖の奥深さに触れ、昔ながらの和紙襖紙の魅力を感じていただけたら、ぜひ一度、襖張り替えの専門店を訪ねてみてください。
当社でも襖の張り替えに関するご質問やご相談をお受けしていますので、ぜひお気軽にご相談ください。