古くから日本の伝統として使われてきた襖。襖の種類は大きく4種類に分けられます。
最も歴史が古く伝統的な日本家屋で使われることが多いのが「本襖」。和室と洋室が混在した近代的な住まいで、使われることが多いのが「戸襖」。そして、現代の日本のマンションなどで使われているのが「段ボール襖」や「発泡スチロール襖」です。
段ボール襖や発泡スチロール襖はその名の通り、素材として段ボールや発泡スチロールが使われています。前回の記事では、本襖や戸襖の張り替え方について解説しました。今回は、段ボール襖や・発泡スチロール襖の張り替え方について説明していきます。
記事の後半では張り替え作業の注意点や、かかる費用についても説明しています。
自宅がマンションで、そろそろ部屋の襖の張り替えを考えている人はぜひ参考にしてみてください。
段ボール襖とは?
段ボール襖は、量産襖の代表的な襖で価格の安さと汎用性を兼ね備えています。近年、多くの住宅で使用されており、実際に目にすることも多い襖です。3層ぐらいに重ねた段ボールが材料として使用され、一番上の段ボールの両面には湿気を防ぐアルミ箔が貼られているのが特徴。
また、叩くと鈍い音がし、引手は釘で打たれていないことが多く、引手を取り外すと中の段ボールが確認できます。戸襖と同じような造りをしていますが、内部がベニヤ板ではなくダンボールなことから、女性や子供でも簡単に持ち運ぶことができます。
発泡スチロール襖とは?
発泡スチロール襖はプラスチックの発泡体を素材とした襖です。最近のマンションやアパートなどの襖で多く使われています。
プラスチックの種類には「スチロール」と「スチレン」の2種類がありますが、過半数がスチロールを使っているものになります。
段ボール襖と同様叩くと鈍い音がし、引手は釘で打たれていないことが多く、引手を外すと中の発泡スチロール素材を確認することができます。襖の種類の中でも軽く取扱いが簡単で、低価格なうえ大量生産が可能な襖になります。
※段ボール襖と同じように便利な一方、破れやすいなどのデメリットもあります。
段ボール襖・発泡スチロール襖の張り替え方法
ここからは、段ボール襖と発泡スチロール襖の張り替え方の手順と準備するものについて解説していきます。
準備するもの
段ボール襖の張り替えの際に準備するものは以下の通りです。
- マイナスドライバー
- ペンチ
- カッター
- ハサミ
- ヘラ
- のり
- プラスチックトレー
- ハケ
- マスキングテープなど
張り替える襖紙やクロスのタイプにより準備するものが少し変わってきます。それに応じて用意しましょう。
発泡スチロール襖の張り替えの際に準備するものは以下の通りです。
- 両面テープ
- カッター
- ハサミ
- 竹べら
- ローラー
- 重し(本や雑誌など)
- カッティングメジャー
- 霧吹きなど
段ボール襖の張り替えの手順
段ボール襖の張り替え方は「枠を外さない方法」と「枠を外す方法」の2つの方法があります。
また、段ボール襖はアイロンの熱でのりを溶かして貼るタイプの襖紙を使うと、失敗するリスクが少ないのでおすすめです。
段ボール襖は引手が釘で打っていないものが多いですが、打ってあるタイプでしたら鋲抜きを使って釘を引き抜き、引手を外してください。
尚、襖は作業台の上に置くと安定感があり作業がやりやすくなります。
アイロンは、ドライでもスチームでもどちらでもOKです。
アイロンの温度は高温に設定しましょう。
あとはシワにならないように気をつけてかけていきます。
しっかりと貼れたことを確認し、カッターではみ出ている部分をカットします。
その際、角をしっかりとアイロンのふちで決め込んでおくのがポイントです。
カッターを使い、引手の部分に穴を開けて、金具を取り付けたら完成です。
引手に釘がついているものであれば、画像のように引手の部分にカッターで八方に切り込みを入れ、引手をはめ込んだあと、上下を釘で打ち込んでください。
続いては、枠を外して段ボール襖を張り替える方法の手順をご紹介します。
枠を外さない方法と同様、引手を外します。
段ボール襖は引手が釘で打っていないものが多いですが、打ってあるタイプでしたら鋲抜きを使って釘を引き抜き、引手を外してください。
尚、襖は作業台の上に置くと安定感があり作業がやりやすくなります。
段ボール襖の外枠は、四隅が接着剤で固定されているので、マイナスドライバーを使って剥がします。
上下の枠が外せたら、左右の枠と補強のアルミ板を外します。
枠が付いていた部分に襖紙を張ってはいけないので、マスキングテープで保護しておきます。
柄の「天」・「地」を間違えないように上から新しい襖紙を置き、はみ出だ部分をカッターで切り取り、アイロンをかけ襖紙を圧着させます。
襖紙を上手く貼れたら、引手を取り付けます。
カッターを使い、引手の部分に穴を開けて、金具を取り付けたら完成です。
引手に釘がついているものであれば、画像のように引手の部分にカッターで八方に切り込みを入れ、引手をはめ込んだあと、上下を釘で打ち込んでください。
手順④~⑤の手順は枠を外さないタイプと同様の手順になります。
発泡スチロール襖の張り替えの手順
続いて、発泡スチロール襖の張り替え手順について説明していきます。
発泡スチロール襖の張り替えに適している襖紙は両面テープで張るタイプです。
また、2枚以上同時に張り替えをする際は、元通りに設置するのでふすまの隅に鉛筆などで番号を書いておくといいでしょう。
発泡スチロール襖の張り替えは、斜めに立てかけて行うこともできますが、作業台に乗せた方が安定します。
ほこりがついていたら払っておきましょう。
枠の内側にぴったり合わせて、両面テープを画像の順に貼ってください。
その際、両面テープの長さは20㎠くらいを目安に小刻みに丁寧に貼りましょう。
両面テープのはく離紙を剥がす前に、襖紙をのせ柄が曲がっていないかを確認し本や雑誌などで重しをします。
一気に全ての両面テープのはく離紙を剥がさずに、画像の番号順にはく離紙を剥がし、矢印の方向にまっすぐ真ん中から外側に向かって、空気を抜くように丁寧に貼っていきましょう。
角から切り込みを入れ、竹べらなどで枠の内側に沿って筋をつけてから、カッティングメジャー(定規など)をあてて、カッターではみ出した部分を切り落とします。
貼り付け→カットをしたら、再度ローラーで同じ場所を3~4回、回転させて圧着していきます。特に四隅はよりしっかりと圧着するよう心がけてください。
襖紙が貼れたら、壁などに立てかけて紙の表面から40〜50㎠離し、30~40回全面に霧吹きをします。
水を吸った襖紙が波打つように伸びますが、表面を擦らないようにしましょう。
襖紙が完全に乾いたら段ボール襖の手順と同様、カッターで引手部部に穴を開け、金具を取り付けたら完成です。
張り替えの際の注意点
こちらでは、段ボール襖と発泡スチロール襖を張り替える際の注意点について説明していきます。
段ボール襖の張り替えの注意点
段ボール襖の張り替えの際、まず注意すべき点は歪みです。
どの襖でも歪みは注意することですが、特に段ボール襖は歪みやすいので、必ず裏と表を同じタイミングで張り替えることがポイントです。
つぎに気をつけることは腐食。
張り替えようとしている襖を手で押してみるとふにゃふにゃしたり、外枠を外すと内部の段ボールにカビが生えていた、ということも少なくありません。そのまま使用すると、カビが部屋全体に繁殖してしまう恐れや、アレルギーを起こしてしまうことも考えられます。なので、万が一そのような状態を発見した場合は、襖本体を新しいものと交換してください。
そして、アイロンをかける際は襖紙がずれるといけないので、大きめのクリップで2ヵ所固定するか、複数人での作業がおすすめです。
あとは、アパートやマンションなどの賃貸物件に住んでいる方は、必ずオーナーや管理会社の承諾を得てから作業を行いましょう。無断で張り替えを行うと退去時の原状回復でトラブルになりかねません。
発泡スチロール襖の張り替えの注意点
発泡スチロール襖を張り替えるときには、必ず2〜3人で作業するようにしましょう。
この襖の張り替えには両面テープを使います。のりでしたら少しずれてもゆっくり動かせば直せますが、両面テープは一度貼ってしまうと直すことが不可能です。なので、作業に慣れるまでは、ひとりで作業しないようにしましょう。
そして、発泡スチロール襖にはアイロンタイプの襖紙やクロスは使わないようにしましょう。熱を加えてしまうと発泡スチロールが変形する恐れがあるので、段ボール襖と同様、両面の張り替えを同時に行ってください。ただでさえ歪みやすい襖だけに、片面だけ張ってしまうと引っ張る力が強くなるので、反り返ってしまうからです。
また、作業の際使うカッターは、細かいカットもできるアートナイフがおすすめです。普通のカッターでカットすると、古い襖紙や芯材である発泡スチロールまで切ってしまうことがあるからです。
張り替えにかかる費用は?
最後に段ボール襖と発泡スチロールの張り替えの際にかかる費用をお伝えします。
【段ボール襖の張り替え:4,000円前後】
段ボール襖の襖紙はホームセンターでも売られています。中には「張り替え初心者セット」などもあり、4,000円前後で購入が可能。セットでなくても1枚あたり1,500〜2,000と料金もお得。工具をいれても4,000円程度で張り替えできるので、DYIがしやすい金額です。
【発泡スチロール襖の張り替え:10,000円前後】
この襖は重ね張りをするしかないので、襖紙の種類によって料金は大きく違ってきます。発泡スチロール襖によく使用されている襖紙なら、1枚あたり1,000〜2,000円程度。両面重ね張りをする場合は2,000~4,000円。必要な用具を全て買いそろえても約10,000円以内で収まるでしょう。
まとめ
今回は、段ボール襖と発泡スチロール襖の張り替え方の手順と張り替えの際の注意点、費用についてご紹介しました。
段ボール襖と発泡スチロール襖は軽く量産できるという共通点があり、近代のマンションやアパートで多く使われていることがわかりました。また、本襖や戸襖と比較すると手順も簡単で低価格なので、DYIにもチャレンジしやすいのではないでしょうか。
張り替えの際は、それぞれの襖に適した用具や手順があるので、今回ご紹介した注意点を参考に、おしゃれな部屋にリフォームしてみてください。