せっかく和室にこたつを置いてくつろげる空間となっているのに、背中が冷えて仕方がない、とお悩みではありませんか。
本来、和室は日本の気候にあった造りとなっているので、冬も暖かく過ごせるようになっています。それなのに寒さを感じてしまうのは、ふすまや建具の劣化によるものかもしれません。
本格的な冬が来る前に現状を確認して対策をおこない、和室の断熱効果をアップしていきましょう。
襖(ふすま)の断熱効果とは?
ふすまに張ってある和紙の効果として、断熱効果や調湿効果が挙げられます。
高温多湿の日本の気候においてカビを防ぐためにもふすまは欠かせないものでした。
住宅構造が進化した現代でも、内部に空気の層ができるふすまは断熱効果が高く、暖房効率をアップしてくれます。
また、障子の断熱効果はガラスの約2倍。障子紙を変えたり、枠の中に断熱材を入れることで効果はさらに高まります。適度な光も確保してくれるので、日中の快適さも変わるでしょう。
そして、畳もふすまと同じく空気を含む構造となっています。吸放湿性の高さにより室内の湿度が保たれ、冬は暖かく夏は涼しく感じられる効果があります。
ふすまや障子、畳の相乗効果を得られるのは和室ならではのメリットです。
和室が寒くなってしまう原因
和室が寒くなる原因としては、すき間風が入ってきたり、障子や畳といった建具の経年劣化によって本来の効果が発揮できていないことが挙げられます。
また、ふすまの種類や張られている襖紙の種類でも断熱効果に違いがあります。
近年、ふすまの種類が豊富になり、量産品を使用した和室はその効果を感じられないことも多くなりました。和室が寒いと感じたら、ふすまの種類や状態を確認してみてください。
まずはふすまの種類を確認
ふすまには大きく分けて3種類の造りがあります。
それぞれ触れるだけで特徴が分かるので、使っているふすまを確認してみましょう。
特徴 | 断熱性 | 価格 | 張替え | |
和襖 | 軽く手で抑えると柔らかさがある | ◯ | △ | ◯ |
戸襖 | 軽く叩くと木の音がする | ◯ | ◯ | △ |
量産襖 | 組子がないので触っても凹凸がない | △ | ◯ | ✕ |
和襖(わぶすま)
本襖(ほんぶすま)とも言われる昔ながらのふすまです。
「組子」という細い骨組みの上から和紙を重ねて作られています。
軽くて通気性がよく、湿気による反りやねじれに強いのが特徴。
製造に時間がかかるので少し高価ですが、断熱性が高く、修復を繰り返しながら長く効果を維持することができます。
戸襖(とぶすま)
組子の上にベニヤ板を貼り頑丈な分、重みがあるのが特徴。
防音性が高いので生活スペースを分ける場所に適しています。
襖紙は張り替えることもできますが、上から重ね張りをすることが多いです。
和襖や戸襖のような組子を使わず、ふすま型の素材に襖紙を張って作られています。
素材の多くは発泡スチロール芯や段ボール芯、ペーパーコア芯などがあり、大量生産によって主流になりつつあるふすまです。
安価で買い換えやすいですが、襖紙のみの張り替えはできないので注意しましょう。
襖紙の種類について
襖紙(ふすまがみ)はその名の通りふすまに張られた紙のことを指します。
襖紙の種類によって断熱効果や耐久性などが大きく異なりますので、予算と相談しながら選んでいただくことお勧めします。
和紙襖紙
昔ながらの伝統的な襖紙で和紙が使われています。柔らかで繊細な質感が魅力のひとつ。
和紙襖紙にはランクがあり、質や耐久性がそれぞれ異なるので、張り替えの目安は約2~10年と大きく差があります。
織物襖紙
和紙に繊維を織り込んで強度を増した襖紙です。
麻や絹を使った天然繊維は折り目が繊細で上級織物と呼ばれるものや、大量生産が可能な普及版織物などのランクに分かれています。
普通の和紙襖紙よりも破れにくく丈夫なので、10年以上張り替えなくて済むことも。
DIY向きの襖紙
戸襖や量産襖に貼ることができる襖紙です。
アイロンやのりを使ったり、シール状になって簡単に貼り付けができるので、部屋の雰囲気を手軽に変えられるメリットがあります。 しかし、ズレやしわを防ぐためにも複数人での作業がおすすめです。
ふすまとその周辺の状態を確認
和室が寒い原因がふすまの場合は目視で確認ができる状態であることが多いです。
ふすまの周りにすき間が空いているところがないか、滑りが悪くなっていないか、合わせて確認をしてみてください。
ふすまの破れ
和襖と和紙襖紙の組み合わせでは細い骨組みの構造上、穴が空いてしまうことがあります。
せっかくの断熱効果が低くなってしまうので一時的に防ぐか、早めに張り替えの検討をしておくことがおすすめです。
織物襖紙に張り替えるとお手頃な価格でも和紙襖紙より耐久性が高まります。少し当たっただけで破けてしまうなどお困りであれば、襖紙の種類の変更を検討しましょう。
上下のすき間
安価な発泡スチロール芯や段ボール芯を使っていると経年劣化や湿度の影響で枠が歪み、上部にすき間ができる可能性があります。
また、積雪や経年劣化による鴨居や柱の歪み、敷居の沈下が原因となることも。その場合は下部にもすき間ができているので、どちらの確認も必要です。
敷居の掃除やメンテナンスをおこなってもふすまがスムーズに動かないときは、鴨居や柱の状態のチェックがおすすめです。
建物の修復は簡単にはおこなえないので、ふすまを歪みに合わせて作り直す選択も考えておきましょう。
左右のすき間
ふすまがぴったりと閉まらないときは敷居が原因の可能性があります。
ふすまの両側の柱や枠の歪みによって敷居の中央が下に反ってしまうと、左右にすき間が空いてしまいます。
家の土台や床下の変形も原因となることがあるので、築年数の経った住宅では考慮しておきましょう。
ふすまの反り
これまでに襖紙を片面だけ張り替えたことがある場合、ふすまの両面のバランスが崩れて反りやすくなってしまいます。
敷居から外れやすい、ふすま同士の干渉で開け閉めがしにくいなどのトラブルとなるので、劣化の差があっても両面を張り替えるようにしましょう。
暖房器具などによる両面の温度と湿度の差も同様です。
うまく乾燥させることで反りを直すこともできますが、木枠が変形している場合はふすま自体の新調がおすすめです。
自分でできる断熱対策
一時的な対応策として100均でも気軽に買える断熱グッズをご紹介します。
その①:すき間テープ
素材が色々とありますが、取りつけやすいのはウレタン素材のものです。
スポンジ状になっていてすき間の形に合わせて調節することができます。
気密性や防音効果を高めてくれるゴム素材、戸当たり音を軽減してくれるモヘア素材もおすすめ。モヘア素材は復元力が高いので長持ちしやすいです。
ただし、すき間テープは1cm以上のすき間には対応できない場合があるので注意が必要です。
その②:スライダーピン
スライダーピンはすき間の逆側の枠にハンマーで打ち込むだけですき間を埋め、ガタ付き対策もできます。
目立ちにくいので見栄えを気にする方にもおすすめの商品。 すき間によっては高さが合わないことがあります。
業者に依頼して万全の防寒対策を
自分ですき間風を防ぐことはできますが、ふすまの特徴である断熱性の改善とはなりません。
本格的な冬が来る前に専門知識のある業者に見てもらい、対策をしておきましょう。
対応できる業者
ふすまの張り替えは表具店や張り替え専門店、工務店などが対応しています。
住宅に関わることなので工務店やリフォーム会社を考える方も多いでしょうが、どうしても専門店より知識が乏しくなってしまいます。
技術とスピードを重視するなら、近隣にある張り替えに特価した専門店がおすすめ。
襖紙の種類や柄が揃っており、選択肢も豊富です。
費用の目安
ふすまの標準サイズ(幅90cm×高さ170~180cm)における費用はこのようになっています。
和紙襖紙、織物襖紙それぞれのランクを含めての目安となります。
並品/枚 | 3,000~4,000円 |
中級品/枚 | 5,000~6,000円 |
上級品/枚 | 15,000~16,000円 |
襖紙の種類によって値段は変わってくるので、保温効果や耐久性もふくめて業者と相談しながら検討してみてください。
ふすま本体の修理が必要な場合は別途費用がかかりますが、業者によっては無料で建て付けの調整をおこなってくれるお店もあります。
前もってふすまの状態を確認してから見積もり依頼をすることがオススメです。
業者の選び方
対応できる業者や費用の目安を踏まえて、以下のポイントを抑えて選んでいただけると失敗はないと思います。
- 地域に根付いた業者
- HPに会社情報や施工例が載っている
- 訪問見積もりが無料
- 明細に詳細がしっかり記載してある
- トラブルなどの口コミがない
- ふすまの張り替えは自宅に来てもらい、実際に状態を確認してもらう必要があります。
- 問い合わせの時点で不審な点がないか確認し、信頼できる業者に依頼をしましょう。
- 持ち帰りの作業になるので、安心して任せられるかの判断も必要です。
冬を暖かく過ごすための和室づくり
一時的な対策方法は100均グッズでも簡単におこなえますが、本来のふすまの断熱効果を発揮することはできません。
専門知識のある業者に確認してもらい、具体的に劣化部分を把握して改善させると暖房の効率も上がり、結果的に費用を抑えることができます。
ふすまの張り替えにおすすめの時期は意外にも梅雨時期の6月。
実は、湿気によって襖紙が伸びるのできれいに張ることができます。
寒さ対策も考えるなら冬に入る前の10~11月までには張替えを検討することおすすめいたします。
きちんとメンテナンスをすれば、カーテンや開きドアよりも断熱効果は高くなります。
せっかくの和室の良さを活かして、ゆっくりくつろげる和室作りを目指しましょう。