襖(ふすま)は日本人にとって非常になじみがあり、伝統ある建具のひとつです。現在ご自宅に和室がある方は、襖を使っていらっしゃると思いますが、「音漏れが気になる」ということはありませんか?
現代では、特に和室の隣がリビングのお家が多くテレビの音や家族の会話などが襖を閉めていても聞こえてしまうので気になるというお声もよくいただきます。
在宅勤務やでテレワークをする方が増えてきた現在、襖から漏れてくる生活音などが気になると仕事の妨げにもなりかねません。また、自分の部屋から周囲への音漏れの影響を気にしている方も多くいらっしゃるようです。
そこで今回は、静かで音漏れによるストレスのない生活環境にするため、襖の音漏れを解決する方法をご紹介していきます。
襖の音漏れの原因を探り、解決策を紹介していきますのでぜひ参考にしていただけると嬉しいです。
襖(ふすま)とは何か?
襖とは、古くから日本家屋で使われている引戸の一種になります。
襖は組子(くみこ)と呼ばれる大きな木の骨組みに、襖紙(ふすまがみ)と言われる紙や布などが張り付けてあり、主に和室の間仕切りや押入れなどで使用されています。
昔の襖には、日本の伝統ある和柄の襖紙が多く使われていました。
現代ではモダンなデザインやポップなデザインなどさまざまな種類が販売されており、お部屋を現代風におしゃれに演出することも可能となっています。
襖(ふすま)の種類について
襖は大きく分けて4種類に分類されます。
こちらではそれぞれの特徴を解説していきますので、ご自宅にある襖がどの種類に該当するのか確認してみてください。
本襖(ほんぶすま)
4種類の中で最も長い歴史のあるふすまが本襖です。
和襖(わぶすま)と呼ばれることもあり、組子の上に和紙や布が張ってあります。上から軽く押さえると中の木枠を感じることができるのが特徴です。
他の障子に比べると厚みがあり造りもしっかりとしています。先人の知恵が詰まった組子の構造により経年劣化による戸の反りやねじれに強く耐久性も非常に優れた襖になります。
また、通気性や断熱性も高いため、高温多湿で四季のある日本の気候にとても適した襖です。
そして、本襖は何度でも襖紙(ふすまがみ)の張替えをすることができるため長持ちですし、特に織物襖紙との相性がいいので和室全体が高級感のある仕上がりになります。
価格自体は、職人さんが1枚1枚手作業で作っているため手間がかかり量産できない、そして組子など材料も多く使うため他の種類の襖に比べると高価になります。
一度購入すれば、襖紙の張替えは必要ですが何十年と使えるため長い目で見ると他の種類の襖よりも費用対効果がよいので最もオススメの襖の種類になります。
戸襖(とぶすま)
和室と洋室が混在している現代の日本家屋。その和室と洋室の間仕切りとして良く使用されているのが戸襖にないります。
和室側には襖紙、洋室側にはクロスや壁紙が貼られている場合が多く、どちらのお部屋も違和感なく仕切ることができます。また、リビングの扉としてもよく使われています。
戸襖は簡易的な組子の上にベニヤ板が使われているので、表面を軽く叩くとコンコンと木の音がします。また、重量がありしっかりとした作りになり、ベニヤ板の上に襖紙が張ってあるため、襖紙が破れにくいというメリットもあります。
しかし、枠とベニヤ板が接着されているため枠から襖を取り外すことができないため、通常襖紙の張替えを行う場合は、上から重ね張りするのが一般的です。また、経年劣化で反りが年々強くなり襖が歪んでいくためふすまの滑りが悪くなってしまったり、襖と襖の間に隙間ができてしまったりします。
段ボール襖
段ボール襖は、下地に段ボールを使っている襖のことを指します。
商品により若干構造は異なりますが、段ボールを3~5層ほど重ね芯材にし、湿気防止用にアルミ箔が貼ってあります。大量に生産できることから量産襖(りょうさんふすま)とも呼ばれています。
コストがかからず安価で汎用性も高いので、マンションなどの住宅でも使用されており、女性でも簡単に持ち上げることができるほど軽量なため使い勝手のよい襖になります。
しかしながら、紙でできているため「本襖」や「戸襖」よりも湿気や強度が弱く変形しやすいため、経年劣化による反りや歪みは上記2つの襖よりも早くそして強く現れてきます。
また、縁(ふち)は接着剤で接合されているため取り外すことができません。そのため、戸襖同様に襖紙の張替えの際には古い襖紙を剥がさずに上から重ね張りをすることになります。ただ、段ボール襖の場合は反りや歪みなども強くなることから張替えをせずに襖の新調をすることオススメいたします。
なので、基本的には張替えでなく使い捨てすることをおすすめします。
発泡スチロール襖
発泡スチロール襖も、段ボール襖戸と同様、工場で大量に生産できコストがかからない襖に分類されるため量産襖の一種となります。
芯材には発泡スチロールが使用されており軽く叩くと鈍い音がし、最近の住宅で良く使われています。
発泡スチロールは、「スチレン」と「スチロール」に分かれますが、大半の発泡スチロール襖の芯材にはスチロールが使用されています。
こちらも量産ができるて、軽いくて安価などのメリットがありますが、段ボール襖同様に経年劣化が早く、耐久性も低いため年々反りや歪みが強くなってきます。
襖紙の張替え時期が来たら張替えはせずに、新調することをオススメいたします。
襖を閉めても音漏れがする原因とは?
襖の防音対策が必要な理由
襖は紙や布が木枠に張られており、軽量で取扱いが簡単ではあるものの、音を吸収する効果はあまり期待できません。
近年ではリモートワークなど在宅勤務する方が増えてきていますが、小さなお子様やペットがいるご家庭では遊ぶ音や鳴き声がほかの部屋に響いてしまい、作業の妨げになってしまいかねません。また、ほかの部屋から音が漏れていると睡眠の邪魔になってしまう恐れもあります。
よって、静かで快適な環境作りをするためには襖の防音対策は必要不可欠と言えます。
さて、襖を閉めているのに音漏れがしてしまうのは一体何が原因なのでしょうか?
主に以下のふたつの原因が考えられます。
原因①:襖そのものの防音性が低い
襖はもともと構造上すき間ができやすい作りとなっています。洋室のドアと比較すると気密性が低く音が通りやすいので、遮音性はそこまで高いとは言えません。
襖は基本的に襖紙(ふすまがみ)という紙を張って作られており、紙自体が音を吸収しにくいという性質を持っているからです。
特に劣化し古くなった襖は、紙や枠の歪みや戸の反りなどでさらにすき間が広がってしまうことがあります。したがって、襖自体の防音効果の低さを補う工夫をすることが大切になります。
原因②:襖の滑りが悪くなっている
襖や敷居が歪んでいたり敷居が摩耗していたりすると襖がうまく滑らなくなり、開閉時の動作に不具合が出るので、不快な音が出る原因のひとつとなります。
加えて、もともとの建付けが悪い・鴨居が下がっている・建物自体が傾いている、などの理由でも襖の滑りが悪くなり不快な音を生み出してしまいます。襖の滑りが悪いと感じたときはこのようなことが原因かもしれないので適切な処置を取り、スムーズ開閉ができるよう適切な処置をすることが大切です。
襖の防音効果を上げる方法5選
襖の防音効果を高める対策はDIYでも行うことができます。こちらでは自分でできる襖の防音効果を高める方法を5選ご紹介していきます。
防音対策①:防音カーテンを取り付ける
防音カーテンとは、音を遮断し吸収するカーテンのことで、防音カーテンを設置することで襖の音漏れを解決するひとつの手段として効果的です。
防音カーテンは、音を通しにくい素材や織り方で作られていたり、特殊なコーティングがされていたりするものなど様々で、遮音効果は防音カーテンの質によって異なります。通常、カーテンレールに設置して使用しますが、枠や上部に突っ張り棒を代用し襖に取り付けることもできます。
また、遮音カーテンは、女性の話し声・ピアノの音・テレビの音など、空気を伝わって届く音には効果があるそうです。
しかし、床や壁などの振動や衝撃と一緒に伝わる音にはあまり効果が期待できないので注意してください。使用する際は布の構造上、本来の音の1~2割程度抑えられると思っておいたほうが無難です。
防音対策②:ふすま戸あたりにすき間用テープを貼る
襖そのものの防音効果を上げるためにはすき間をなくすことがとても重要です。
すき間テープは、防音対策だけでなく部屋の気密性を高めるため空気の流れを遮り、音の通り道を防ぎ防音する効果が期待できます。
すき間テープは100円均一やホームセンターなどの身近な店舗で販売されており、「襖の枠に沿ってテープを貼るだけ」で簡単に防音効果をアップすることができる商品です。手軽に入手できる商品ですので気になる方はまず試してみることオススメします。
すき間テープを貼る際には、接着部分の縁に汚れがついているとテープの効果が半減するため、使用前にふすまや枠の掃除をし、キレイにしておくことがポイントです。
注意点として、粘着テープのため長年すき間テープを貼り付けたままにしていると、粘着部分がこびりつきうまく剥がせない場合があります。当然、環境により交換頻度はさまざまですが、年ごとなど定期的にテープをご自身のタイミングで貼り換えることオススメいたします。
また、テープの種類はメーカーによってさまざまなのでご自宅の襖に合ったものを選ぶのが大切ですので購入する前に接着部分の寸法を計ってから購入することオススメいたします。
防音対策③:吸音材を設置する
吸音材とは、空気中に伝達する音のエネルギーを吸収し、熱エネルギーに変えることで音を減少させる防音材の一種のことです。
音を反射せず吸収できるので音漏れを軽減することができます。
襖に吸音材を貼り付けるだけなので取り付けは簡単ですが、吸音材自体に厚みがあるので襖の開閉を妨げてしまう可能性もあります。
そのため普段は開け閉めを行わない襖や、簡単な防音対策をしたいという方におすすめです。
防音対策④:家具の配置を見直す
家具が置いてある場所を変えてみるのも襖の音漏れを防止するためのひとつの方法です。テレビなど、音がでるものは襖から距離が離れるところに置いてみるのも有効です。
また、背の高い家具は防音壁としての効果が見込めます。本棚や衣装棚などの背が高い家具があれば、襖周辺に置いてみるのもおすすめです。家具を壁側に設置する際は、家具と壁の間を数㎝ほど開けて空気の層を作ることがポイントになります。
さらに、収納棚の中には本や洋服がしっかりと入っているほうがより防音効果が期待できます。防音グッズを購入する前に、まず家具の配置を考えてみることも大切です。
防音対策⑤:襖を引き戸へリフォームする
上記のことを試したうえで、それでも襖の音漏れが気になる方は、思い切って襖を引き戸や開き戸(ドア)にリフォームしてみるのも一つの方法としてあります。
引き戸や開き戸は襖よりも気密性が高いため、防音効果に優れています。
ただし、襖の「調湿効果」や「断熱効果」などの機能は失われますし、費用も高額となるため新調に考える必要があるかと思います。
ふすまから引き戸に変える場合は、本来の襖の枠に合うサイズの引き戸があれば自分で取り替えることも可能です。
お近くのふすま張替え専門店や工務店、ホームセンターなどで専門家のご意見を聞いてから判断することをオススメいたします。
ふすま自体の開閉音が気になる時の対処法は?
襖の動きが悪くなると、開閉の際に音が出てしまうことがあります。マンションやアパートなどでは隣や上や下の住んでいる方に意外と聞こえることもあるので、気配りが大切になります。
ガタガタする原因はさまざまですが、ゴミやホコリが溜まっている場合はキレイに取り除くと解決できるかもしれません。
また、鴨居や敷居に潤滑スプレーをかけると滑りがよくなるのでおすすめです。
潤滑スプレーはホームセンターやネットでも購入することができます。
ですが、これらのことを試してみても解決しない場合は鴨居や敷居の歪みや変形、建物自体が傾いてきているのが原因かもしれません。
そのような場合はDIYではなくふすまの専門店へご相談することをおすすめします。
襖の防音対策や張替えの相談は「張替え専門店」へ
ここまで、自分でできる襖の防音対策についてご紹介させていただきました。
しかしながら、自分でできる襖の防音対策には限界があります。もしかすると、求めていたほどの防音効果を期待できないかもしれません。
そういった場合は、襖の専門店に依頼をするのが確実です。襖の防音対策を専門店に依頼するメリットは以下のような理由があります。
- 時間や手間をかけず防音性をアップできる
- 必要な道具を揃えなくても良い
- 襖についての豊富な知識がある
- 道具の使い方や作業の手順に慣れている
- 襖以外(障子・畳・網戸など)の相談もできる
また、専門店に依頼すると費用がかかると思いがちかもしれませんが、さまざまな手段を自分でためすより時間や手間も省け、仕上がりがキレイなのでコストパフォーマンスも良くなると言えます。
まとめ
今回は襖の防音対策について、音漏れしてしまう原因や自分でできる解決策についてご紹介しました。
襖は一般的なドアと比較すると、気密性が低いので音が通りやすく音漏れをしやすいということがわかりました。ご自宅の部屋の出入り口や間仕切りが襖になっている場合は、音が気になってしまうこともあるかもしれません。
自分で襖の防音効果を高める対策には、
- 防音カーテンを使用する
- すき間用テープを貼る
- 吸音材を使う
- 家具の配置を見直す
- 襖を引き戸へリフォーム
などがあります。
しかし、これらの対策が自分で難しい場合やより高い防音効果を求められる場合は、専門店に依頼をするのがおすすめです。
襖は日本伝統の建具で、インテリアとしてもとても魅力ある建具ですが遮音効果はそれほど高くありません。ご自宅の襖の音漏れが気になる方は、防音対策を検討し静かで快適な生活環境作りをしてみてください。