お家の屋根についている筒状の建材を「雨どい(あまどい)」と言います。
雨どいは大半の家にあり、屋根の軒先や建物の端に設置されている筒状の建具のことです。雨どいとは耳にしたことがある方や、目にしたことはあるけれどその役割や種類などについて詳しく知っている方は少ないのではないでしょうか?
雨どいは雨の多い日本の家になくてはならないものですが、古いものや壊れているものを放置しておくとさまざまなデメリットが生じてしまいます。
そこで今回は、雨どいがなぜ必要なのかや壊れた雨どいを放置しておくことのデメリット、素材や種類などについても詳しく解説していきます。また、雨どいの修理・交換には専門店がおすすめですが、その理由や専門店を選ぶ際のポイントについても詳しくお伝えしていきます。
雨どいの修理や交換を考えている方はぜひ参考にしてみてください。
雨どいとは?
雨どいとは、”屋根で受け止めた雨水を一カ所に集めて排水させる筒状の建材“のことを指します。
建物の軒先や端っこに取り付けられており、ほとんどの一般住宅に設置されています。こちらでは、雨どいの役割・歴史・必要性について詳しく解説していきます。
雨どいの役割
雨どいの主な役割は、代表的なもので言うと以下のようなことが挙げられます。
- 建物の劣化や浸食を防ぐ
- 建物の外観をキープする
- 雨漏りの危険性を回避する
- 近隣トラブルの防止
建物の劣化や新色を防ぐ
雨どいは、雨が降ると屋根に降った雨を一か所に集め、適切に排水をしてくれます。もし雨どいがなかったり壊れていたりすると、屋根に降った雨は直に地面に落ち家の基礎や外壁を汚してしまいます。
家の基礎や外壁が湿った状態が続くとカビや苔が発生し劣化が進むだけでなく、白アリの餌にもなり腐食を招いてしまいます。このように雨どいは、適した排水経路を作ることで建物の基礎や外壁を劣化や腐食から守る役割を果たしています。
建物の外観をキープする
建物の外観が損われてしまうひとつの原因が、外壁の汚れです。もし雨どいがなかった場合、屋根の雨水はそのまま地面に落下するので、水たまりができ跳ねた泥などで外壁やその周りを汚してしまいます。
雨どいが取り付けてあれば、雨水がダイレクトに壁を伝わるのが少なくできるため建物の景観を維持することができます。
雨漏りの危険性を回避する
雨どいが本来の役目を果たしていないと、屋根の雨水は軒先から直接外壁へ流れていきます。その結果軒や外壁は劣化が早まり、「クラック」と呼ばれるひび割れが起きてしまう恐れがあります。
よって屋根裏や外壁から雨水が浸入し、雨漏りをもたらしてしまいます。
近隣トラブルの防止
もし雨どいを設置していなかった場合、隣の家との距離が近いと屋根から流れ落ちた雨水が隣の家の敷地内に直接流れ込んでしまうことがあります。
また、泥が跳ねて隣の外壁を汚してしまう可能性も。さらには、金属製の屋根やカーポートに大量の雨水が当たると雨音が大きく感じるので、周囲の家に騒音を感じてしまうこともあります。
このようなことが起こると近隣トラブルに発展しかねません。近隣トラブルを招かないようにするためにも、雨どいは必ず設置することが大切です。
ご説明させていただいたように、雨どいは雨の多い日本の建物において必要不可欠だと言えます。
雨どいの歴史
日本の雨どいの歴史の起源は平安時代だと言われています。それは平安時代後期に作成された歴史物語【大鏡】の中の「花山院家造り」の一節に当たります。
あわいに”ひ“をかけて涼し |
この記述は当時の建築様式であった多棟住宅(ひとつの区画の中に複数の戸建てを建てる現場のこと)の谷の部分「あわい」に設置された「受け桶(うけひ)」のことでは?と考えられています。
平安時代の受け樋は「懸樋(かけひ)」とも呼ばれていました。当時は雨水がとても貴重で、生活用水や飲料水として使用していたそうです。よってその頃の受け樋は雨水を排出する役割というよりも、屋根から水槽に導くものとして上水道として使われており、これが雨どいの起源だと推測されています。
時代が進み、屋根に瓦が使用されるようになると雨どいが現代と同じ雨水を排出するのが目的となりますが、日本で現存する最古の雨どいは「東大寺 法華堂(三日月堂)」の木製のものだそうです。
また、雨どいは江戸時代までは主に神社仏閣(じんじゃぶっかく)で使われていたようです。神社仏閣では屋根に瓦が使用されていたため、雨どいが必要であったと考えられています。一方で通常の住宅では雨どいは普及していませんでした。一般住宅では「草ぶき屋根」や「かやぶき屋根」が使用されていることがほとんどだったため、屋根そのものが水分を吸収してくれるので、雨どいの必要がなかったためだと予測されています。
そして、雨どいが一般家屋に普及するようになったのは江戸時代からになります。江戸時代には瓦がさらに普及し、住宅が密集して隣の家と軒が接するようになりました。家同士が近いと、隣家に雨水が流れこんでしまったり泥が跳ねて外壁を汚したりしてしまい、また落下した雨水で家の基礎が傷んでしまうのを防ぐため桶が必要になったからです。
このようにして雨どいは江戸時代以降、一般家屋にも広く浸透していきました。
雨どいの種類の紹介
雨どいの形状にはいくつか種類がありますのでこちらでご紹介していきます。
丸形
丸型の雨どいは、円を半分にしたような半円の断面をしている雨どいで、半円型とも呼ばれます。
雨どいといえば一番スタンダードな形がこの丸型ではないでしょうか。
形が単純であり他の雨どいよりも安価なので、ホームセンターでも入手が可能です。
築20年以上の家屋は丸型の雨どいが使用されていることがほとんどだそうです。
角型
角型の雨どいは、断面が四角形になっています。丸型の雨どいに比べると流水量が多いので、降水量が多い地域でよく使われています。
ですが、最近では線状降水帯による突発的な雨も増えているため、大雨対策として現代の主流にもなりつつあります。
一方、丸型に比べると価格が高くなるのがデメリットです。
特殊型
特殊型の雨どいは、北海道や東北地方などの降雪量の多い地域で良く使用されます。
雪かきをする際に雪が雨どいにひっかかり壊れてしまったり、雪でふさがってしまうのを防ぐために覆いがついています。
また、降雪量が少ない地域では落ち葉などが雨どいに入るのを防ぐために使われていることもあるようです。
複雑な形で用途も限られ、流通量が少ないので丸型や角型よりも高価になります。
鎖状
鎖状の雨どいは鎖樋(くさりどい・くさりとい)と呼ばれます。上記でご紹介した雨どいのように排管に水を通すのではなく、屋根から垂らした鎖に水を伝わせて排水口へ落とす仕組みとなっています。
鎖樋は、日本発祥で神社やお寺・昔ながらの日本家屋に使われています。最近では洋風の住宅が増えてきたため、あまり目にすることがなくなってきました。
形はさまざまで、リング状・花びら状・チューリップ状などがあります。鎖樋は雨の流れが目で見えるため、単に雨どいとしての役割を果たすだけでなく、レトロなデザインで情緒あふれる風情を楽しむことができます。
雨どいの素材の紹介
塩化ビニール樹脂
塩化ビニール樹脂は最も一般的な雨どいの素材で、多くの住宅で使われています。
塩化ビニールとは、プラスチックの一種でビニールハウス・文房具・縄跳び・ホースなどありとあらゆるものに使用され、高い耐久力を持っています。
軽量で安価・組み立てが簡単というメリットがあるのでさまざまな住宅の形状に合わせやすいという特徴があります。
ホームセンターなどで購入することもでき、比較的修理もしやすい素材です。
ガルバリウム鋼板(こうはん)
ガルバリウム鋼板とは、アメリカのベスレヘムスチール社で開発されたアルミニウムと亜鉛の合金をメッキした素材のことを指します。
メッキ処理がされているので、高い耐久性がありサビにくいのが特徴です。
金属の雨どいの中では安価になりますが、塩化ビニールに比べると高価な素材です。
被覆鋼板(ひふくこうはん)
被覆鋼板とは、金属板にポリ塩化ビニール樹脂などをコーティングした素材のことです。
そのため腐食やサビ、紫外線にも強いという特徴があります。ただしメンテナンスフリーではないので、被覆材が壊れる前にメンテナンスをする必要があります。
大型の雨どいに使われることが多く、ステンレスよりはお手頃な値段になります。
銅
銅は10円玉にも使用されています。
高価で耐久性に優れた素材で神社やお寺などの雨どいに使われています。
新しく取り付けられたときはキレイな銅色をしていますが、年月が経つにつれ「緑青(ろくしょう)」という青緑色に変化していき、風情が出てきます。
この緑青はサビになりますが、酸化の進行を遅くしたり抗菌作用があったりという特徴があります。
アルミニウム
アルミニウムは錆びにくく、熱にも強いという特徴を持つ素材です。
工場の雨どいなどで使用されることもありますが、流通量がとても少ないため一般住宅の雨どいとして使われることはほとんどありません。
ステンレス
ステンレスはさまざまな金属を化合した合金の一種です。
アルミニウムと同様にサビに強く、耐久性に優れますが、傷が付きやすいのがデメリットでもあります。
金属の雨どいの中では安価になりますが、こちらもあまり流通量がなく一般住宅ではほとんど使われていません。
壊れた雨どいを放置しておくことのデメリット
雨どいを壊れたまま放置しておくとさまざまな不都合が発生します。こちらで起こりうるデメリットを詳しく説明していきます。
- 室内の雨漏り
- 建物内部の浸食や基礎への影響
- 地面がえぐれる
- 落下事故
- 近隣トラブル
室内の雨漏り
室内の雨漏りの原因のひとつは、雨どいの破損やヒビになります。
このヒビは「クラック」と呼ばれ、放置していると雨水が屋根裏や外壁を伝わり、住宅内部に侵入し雨漏りを引き起こしてしまいます。
破損やクラックを放置し続けていると、雨漏りの箇所から浸水被害はさらに広がっていきますので、被害が大きくなる前にメンテナンスをすることが大切です。
建物内部の腐食や基礎への影響
雨どいは屋根からの雨水を一か所集め、適切に排水をする役割があります。
雨どいが壊れたままになっていると、雨水が外壁全体を伝って流れるようになってしまいます。
よって、家の基礎や外壁が湿気を含んだ状態が続くと、カビや苔が発生しやすくなるだけでなく、木材の腐食を招いてしまいます。この腐食が進むと家の基盤が不安定になり、最終的には家が崩れてしまうこともあります。
地面がえぐれる
雨どいの破損をそのままにしておくと、雨水が一気に地面へ流れ落ちていきます。
そして、建物の1〜階から雨水が落ちると数年で地面がえぐれ、コンクリートが削れていきます。それを放置しておくと、そこに溜まった水が玄関から室内に入り込んでくる恐れもあります。
落下事故
雨どいが壊れ、もろくなったり錆が発生したりすると、風雨により落下してしまう可能性もあります。
古くなった雨どいや留め具の落下は、車や外壁に当たり傷をつけてしまい人の上に落ちる事故につながる可能性もあります。
雨どい自体は軽いので落ちても問題ないと思うかもしれませんが、2回などの高いところからの落下は勢いも増し、留め具などの金属が落ちると非常に危険です。
近隣トラブル
雨どいが破損していると、近隣トラブルの原因にもなりかねません。
壊れた雨どいは雨水を一か所に集めることができなくなるので、雨水がダイレクトに流れ落ちてしまいます。そのため、近隣同士が近いと一か所に溜まった雨水は隣家の外壁やベランダに流れてしまう場合もあります。
なので隣家の洗濯ものが汚れ、留め具の落下により外壁や車に傷をつけてしまったり、窓ガラスが割れてしまうケースもあります。
雨どいは、普段何気なく目にしているものですが、住宅にとってはとても重要な存在です。壊れているのを知りながら放置しておくのは大きなトラブルを招くことになりますので、未然に防ぐために、破損に気づいたら早めに対処しておくことが大切です。
雨どいが壊れる原因と対処法
雨どいが壊れやすいシーズンは特に夏と冬ですが、こちらでは雨どいが壊れる原因とその対処方について解説していきます。
経年劣化
雨どいの一般的な耐久年数は20〜30年ほどだと言われています。なので、これ以上の年数が経過している雨どいは寿命がきていると考えられます。
お住まいの地域環境により多少の差はありますが、寿命が近い雨どいは、変形・変色・漏れ・割れなどのさまざまな症状が見られるようになります。ですが、20年以内であっても寿命がきていることもありますので、それより前に不具合を確認しておくことが大切です。
台風やゲリラ豪雨
台風やゲリラ豪雨の多い夏は雨どいが特に壊れやすい季節です。
台風の強風で雨どいがズレ、取り付けに使われている留め具が外れ破損してしまうことがあります。またゲリラ豪雨などで雨量が増えると、雨どいが適切に排水をできなくなりゴミなどが詰まって溢れてしまい、本来の役割を果たせなくなるケースもあります。
このような自然災害は、雨どいの経年劣化は関係なく新しくても破損してしまうので、夏はあらかじめ雨どいをテープなどで固定し対応しておくといいかもしれません。
強い紫外線
夏はゲリラ豪雨や台風だけでなく、強い紫外線の影響が雨どいを劣化させる原因にもなります。
特に塩化ビニール製の雨どいは紫外線の影響を受けると硬化し、軽い力が加わっただけでも破損してしまうことがあります。
これは輪ゴムを日差しの強い場所に置き、しばらく放置したあとに伸ばすと簡単にちぎれてしまうのと同様の現象です。
積雪
冬は夏の次に雨どいが破損しやすくなる季節です。
落ち葉や枯れ葉などが雨どいに詰まり、水がうまく流れなくなることもあるので、高い木から枯れ葉が落ちてくる対処をしておく必要があります。
また、特に寒い地域では配管が凍結したり大量の積雪の重みにより雨どいが歪んで壊れたりすることもあります。
雨どいの損傷を防止するためのポイント
雨どいの破損を防止するためには、”雨どいの歪んでいないか“や”曲がっていないか“、”ゴミや落ち葉が詰まっていないか“を確認しておくことが大切です。
ただし、自分で確認する際は下から見上げるかベランダや窓から見下ろせる場合だけにしてください。屋根の上から自分で確認するのは、落下の可能性があるため大変危険です。
また、落ち葉やゴミなどを取り除く掃除をしておくことも大切ですが、こちらも自分でやるときははしごや脚立が必要になり危険を伴います。
よって、高いところにある雨どいを確認するときは専門店に依頼をするほうが確実です。
雨どいの修理・交換は業者に依頼を
上記でも述べましたが、壊れた雨どいの修理や交換を自分でするのは危険なので安全に作業ができる業者に依頼するのがおすすめです。
こちらでは雨どい修理・交換に対応してくれる業者の種類をご紹介していきます。
リフォーム会社
リフォーム会社は、新築工事などは請け負わずリフォームやリノベーションに特化しています。
特に屋根や外壁などのエクステリアを得意とするリフォーム会社であれば安心して雨樋の修理や交換を依頼することができます。
また、自社施工と下請け業者に発注するところがありますが、費用を抑えたい場合は自社施工を行っているリフォーム会社を選ぶことをおすすめします。
屋根工事専門店
屋根や雨どいの修理を専門としているので、知識や豊富な経験があります。
自社施工のところが多いため、価格が抑えられるのと小さな修理でも気軽に対応できるところがメリットです。専門業者なので他の会社では見つけにくい雨漏りの原因なども見つけてくれる可能性が高いです。
一方、大手ハウスメーカーに比べると保証やアフターサポート体制が整っていないところもあるので、SNSで口コミなどを確認し安心できる業者かどうか見極める必要があります。
ホームセンター
ホームセンターでも雨どいの修理を行える体制が整っています。行きつけのホームセンターで気軽に依頼ができるところがメリットになります。
しかし、どのような施工業者が作業を行ってくれるのかがわからないため、職人を選べず技術力に差が出てしまう可能性があります。
塗装業者
塗装業者の中には、雨どいの修理を受け付けている会社もあるようです。
屋根や外壁の塗装と同じタイミングで雨どいの修理が1回でできるため費用の節約ができる可能性もあります。ですが、塗装業者は雨どいを専門としていない会社が多いようなので、依頼した場合は下請け業者に頼むことになり、費用が割高になることもあるので注意が必要です。
なので、塗装業者への雨どいの修理・交換はあまりおすすめしません。
工務店
戸建て住宅を請け負っている工務店は雨どいについてはもちろん、住宅についての全ての知識に特化しているため悪徳業者に当たる可能性も低く、安心して作業を任せられます。
また、地域密着型の工務店も多く企業規模が小さいので職人に小さな要望も伝えやすいのが特徴。よって、腕の良い職人に当たればコスパは非常にいいと言えます。ただし、自社施工を行っていないところは高額になる可能性があります。
ハウスメーカー
ハウスメーカーも、住宅に関しての知識や経験が豊富です。
お住まいの住宅を建てたハウスメーカーに依頼をするのも選択肢のひとつです。
信頼度が高いので安心して修理や交換を任せたいならハウスメーカーがおすすめです。ですが、工務店と同様にハウスメーカーも自社施工を行っているところは少ないので、費用は割高になる可能性が高いです。
まとめ
今回は、雨どいについて役割・種類・素材・壊れる原因や放置しておくことのデメリットなどを詳しく解説しました。雨どいは屋根の雨水を一か所に集め、適切に排水を行う建材です。
雨どいを壊れたままにしておくと、
- 雨漏り
- 建物の外壁や基礎への影響
- 地面のえぐれ
- ご近所トラブル
- 落下事故
などが起こる可能性があり、最悪の場合家の崩壊にもつながります。
雨どいの破損を防ぐためには、普段から状態を確認しておく必要がありますが高いとろこにあるため自分での点検は控え、必ず専門店に依頼をするようにしてください。その際は、ご自宅と相性の良い専門店を選ぶことが大切です。
普段何気なく目にする雨どいですが、実は大変重要な役割をしていることがわかりました。ご自宅の雨どいが壊れている方はもちろん、この記事を読んでいただき雨どいの状態が気になる方も、まずは1度専門店に相談をしてみてください。