障子とは大きな木の枠の中に、縦横の組子(くみこ)と呼ばれる多くの桟(さん)をつけ、障子紙(しょうじがみ)と呼ばれる明かりを通すことのできる紙を貼った建具のことを指します。通常は引戸形式になっており、主に和室で使われています。
障子は長い伝統があり、昔は和紙が素材の障子紙が一般的で日本ならではの風情を感じることができます。しかしながら、昔ながらの障子紙は掃除がしにくかったり破れやすかったりなどさまざまなデメリットが生じることもあります。
そこで近年では、昔ながらの障子紙のデメリットを克服した「強化障子紙(きょうかしょうじがみ)」というものが登場していますのでご紹介していきます。
特徴や種類なども詳しく解説しますので、自宅の和室の障子紙を破れにくいものに張り替えたい方や、お手入れを楽にしたい方はぜひ参考にしてみてください。
強化障子紙とは?
強化障子紙とは一般的な和紙の障子紙のテクスチャーはそのままに、化学繊維やプラスチック繊維を混ぜ、特殊加工が施された耐久性に優れた障子紙のことを指し、「プラスチック障子紙」と呼ばれています。
まずは、強化障子紙の役割やメリット・デメリットについて解説していきます。
強化障子紙の基本的な役割とメリット
① 自然光を取り入れる
障子紙が貼ってあることで、直射日光のまぶしさが抑えられます。
そのため、外の光を柔らかく取り入れることができ、部屋全体が均一に明るくなります。
② 強度が強く長持ちする
強化障子紙は、和紙を薄いプラスチックの間に挟んで作られているので、通常の障子紙と比較するとかなりの強度があります。
そのため、ペットの引っかきや小さなお子様がいたずらをしても、すぐに破れることがありません。
③ 外からの視線を遮断する
特に夕方以降のガラス越しは外よりも家の中が明るくなるので、家の中の生活が丸見えになってしまいます。そこで、障子を閉めておけば外部からの視線を遮ることができます。
また障子紙が貼ってあることで、部屋が真っ暗になってしまうこともありません。
④ 断熱効果が高い
障子は、カーテンよりも高い断熱効果があると言われています。強化障子紙はプラスチックを貼り合わせているので、通常の障子紙よりもさらに高い断熱効果を得ることができます。
よって冷暖房の効率が良くなるので、夏は涼しく冬は暖かく過ごすことができ、電気代の節約にもつながります。
⑤ 紫外線をカットする
強化障子紙は、紫外線をカットする効果があります。中には紫外線を95%以上カットするものもあるので、通常の障子紙のように日焼けで色褪せする心配がありません。
また、室内の家具やインテリアが紫外線を浴びて劣化するのも防いでくれます。
⑥ お手入れが楽になる
和紙製の障子紙は水拭きができないのでお手入れが困難ですが、強化障子紙は汚れにくく水拭きも可能なため日々のメンテナンスの負担が軽減されます。なので、通常の障子紙に比べると張り替えまでのスパンも長くなります。
強化障子紙のデメリット
強化障子紙は、メリットがたくさんある一方、和紙製の障子紙に比べると少なからずデメリットもありますので解説していきます。
① 高価なものが多い
強化障子紙は、和紙製の障子紙と比較すると若干価格が高い傾向にあります。
和紙障子紙は100円均一で300円程販売されていることもありますが、強化障子紙は100円均一での取扱いはなく、ネットで一番安価な店舗でも700円くらいで販売されています。
しかし、強化障子紙は耐久性が高いので和紙障子紙より長持ちすることを考えると、必ずしもコストパフォーマンスが悪いとは言えません。
② 通気が性低い
和紙障子紙は湿度が高いと湿気を吸収し、低くなると放出するという調湿効果がありますが、強化障子紙は調湿効果がないため障子の間に湿気が溜まりやすくなります。
また、和紙障子紙と比べ通気性も悪くなるので、窓障子の場合はカビや結露が発生する恐れもあります。
結露が発生すると強化障子紙がはがれやすくなるので注意が必要です。
③ 和紙の風合いを楽しめないものもある
強化障子の場合、和紙障子紙に比べると日本の伝統や風情のある素材感を楽しめないこともあります。
しかし、強化障子紙の中には和紙のような見た目に作られているものもあるので、和紙の素材感を楽しみたい方は、どれくらい和紙に近づけて作られているかを見極めて選ぶことがポイントです。
④ 熱でたるむことがある
樹脂で作られている強化障子紙は、熱で膨張する性質を持っています。
そのため直射日光などで熱が過剰に加わると、強化障子紙がたるんだりはがれたりする可能性もあります。
上記の強化障子紙のメリットやデメリットを把握し、用途や場所・ライフスタイルに合わせて適したものを選ぶことが大切です。
強化障子紙と通常の障子紙の種類と比較
強化障子紙と通常の障子紙は強度や通気性・素材などが異なります。こちらではその違いを表にし比較してみました。
強化障子紙 | 手漉き(てすき)和紙 | 機械漉き(きかいすき)和紙 | |
素材 | ・ビニール ・化学繊維 etc. | ・プラスチック・楮(こうぞ) ・三椏(みつまた) ・麻(あさ) などの植物 | ・雁皮(がんぴ)・レーヨン etc. | ・パルプ
耐久性 | 5~7年程度で張り替え | 3~5年程度で張り替え | 環境によっては1年で張り替え |
通気性 | 通気性が悪い | 通気性が良い | 強化障子紙より良い |
メリット | ・破れにくい ・水拭きできお手入れが簡単 ・断熱効果がある | ・汚れにくい・断熱効果がある ・日本の伝統を感じられる | ・吸湿性 / 調湿性がある・大量生産できる ・断熱効果がある | ・安価
デメリット | ・重量がある ・静電気が起こりやすい ・高価なものが多い | ・結露が発生することがある・大量生産できない ・破れやすい ・日焼けしやすい ・水拭き不可 | ・高価・日焼けしやすい ・水拭き不可 | ・破れやすい
ワーロン紙と強化障子紙の違いは?
こちらでは「ワーロン紙」という強化障子紙の一種について、通常の強化障子紙との違いや特徴などを解説していきます。
ワーロン紙とは?
ワーロン紙と通常のプラスチック障子紙は、いずれも和紙をプラスチックで貼り合わせた障子紙になりますが、ワーロン紙はPET樹脂(ペットじゅし)や塩化ビニール樹脂、プラスチック障子紙は塩化ビニール樹脂が使われています。
ワーロン紙は和紙のような風合いがありながら、通常の障子紙の約5倍の耐久力があり、汚れにくく燃えにくいなどの機能が備わっています。
【PET樹脂とは?】
PET樹脂とは、ポリエステルの一種で衣料繊維やペットボトルの容器など幅広い用途で使用されています。
透明で耐薬品性・耐熱性・耐水性などに優れ、燃やしても有毒なガスが発生しないので環境に優しい樹脂です。
【塩化ビニール樹脂とは?】
塩ビ(えんび)とも呼ばれる合成樹脂の一種で比較的安価。耐薬品性・難燃性・耐久性が高く、高い汎用性を持っています。
ビニールハウス・文房具・縄跳び・ラップ・工業用ホースなどに使われています。
ワーロン紙の特性と用途
ワーロン紙の特性は以下の通りです。
- 指で突いても簡単には破れない
- 強度が高く変色しにくい
- UVカット効果がある
- 水拭きができるためお手入れが簡単
- 和紙より断熱効果が高い
- 和紙より張り替えが簡単
このようなことから、ワーロン紙はペットやお子様のいるご家庭に適しています。
また、紫外線による家具の日焼けも防いでくれるので、直射日光が当たりやすい部屋や耐火性があるので火を扱うキッチンなどにもぴったりです。
さらにさまざまな柄から選べるので、お部屋をおしゃれに演出したい方にも向いています。
ペットワーロン紙とは?
また、ワーロン紙の中には「ペットワーロン紙(ワーロンペットシート)」という種類もあります。
ペットワーロン紙は、”株式会社ワーロン”で製造されている、天然素材の和紙をPET樹脂で貼り合わせた強度に優れたインテリア素材で、ペットの引っかき対策としても使うことができます。
ペットワーロン紙の特徴は、以下になります。
- 温度変化で伸び縮みしないのでたるみが出にくい
- ワーロン紙の約3倍の強度がある
- 衝撃に強いのでペットの引っかき対策に適している
- 和紙のような柔らかなテクスチャーを表現
- 表面の水拭きができるのでお手入れが簡単
- 紫外線で日焼けしにくい(UVカット率72%)
- 表面がコーティングしてあるので毛羽だちが少ない
- 和紙のようなテクスチャーと白さで部屋を明るく演出できる
強化障子紙の選び方
強化障子紙を選ぶ際は以下のようなことに気をつけながら選ぶのがポイントになります。
選び方その1:使用環境で選ぶ
ペットや小さなお子様がいるご家庭は破れにくく汚れにくいタイプ強化障子紙がおすすめです。
また、部屋に直射日光が入りやすく家具が日焼けしてしまう環境の方には、UVカット効果の高い強化障子紙が適しています。
その反対で、北向きの部屋は日光が入りづらく暗くなりがちですが、部屋を明るく演出できるタイプの強化障子紙もあります。
選び方その2:機能性で選ぶ
強化障子紙にはさまざまな優れた機能があります。
断熱効果をより高めたい方は「断熱性」、結露が気になる方は「通気性」、紫外線カットをしたい方は「UVカット効果」、お手入れを楽にしたい方は「水拭き可能」など、自分がどの機能を優先したいかで選んでみてください。
価格帯やコスパで選ぶ
ワーロン紙やペットワーロン紙は、通常の強化障子紙と比較すると高価ではありますが、その分頻繁に張り替えをしなくてもいいことを考えると、コストパフォーマンスがいいと言えます。
低価格でも通常の障子紙より破れにくいものをお探しの方は、楽天市場やAmazonなどのネット通販で安価な強化障子紙を選んでみるのもひとつの方法です。
強化障子紙の紹介5選
強化障子紙といってもさまざまな種類が販売されています。
ライフスタイルや用途に合わせて選ぶことができますので、こちらで5選紹介していきます。
① UVカットプラスチック障子紙
障子紙にプラスチックがラミネートしてある強化障子紙です。
UVカット効果が95%ととても高いので室内の色あせが気になる方に特におすすめです。
両面テープで簡単に貼ることができ、ペットの引っかきなどにも強く水拭きにも対応しています。
② アイロン貼り超強プラスチック障子紙
こちらの強化障子紙はアイロンで簡単に貼ることができます。
破れにくいのはもちろん、通常の障子紙より断熱効果も高く、省エネ効果が期待できます。
③ 明るいアイロン貼り障子紙
こちらもアイロンで貼るタイプの強化障子紙です。
貼ることで室内が通常の30%ほど明るく感じられる障子紙なので、部屋に明るさが欲しい方におすすめです。
④ ワーロンシート スタンダードタイプ
ご紹介したワーロン紙もオンラインで販売されています。
通常の強化障子紙よりも高価ですが、さらに強度が高く劣化しにくいので張り替え期間を長くしたい方や、ペットやお子様がいるご家庭の方におすすめです。
こちらも両面テープで貼ることができます。
⑤ PETホームワーロン
ご紹介したワーロンPETシートもネットで購入することができます。
和紙のような質感がありながら衝撃に強く耐久性がとても高いので、とにかくやぶれにくい障子紙をお探しの方におすすめです。
障子紙としてだけでなく、照明カバーやディスプレイの装飾などのインテリア素材としてもお使いいただけます。
強化障子紙の張り替えはプロにお任せ
強化障子紙は、和紙障子紙のように糊で貼ることができません。
ご紹介した強化障子紙も両面テープやアイロンの熱を利用して貼れるものが多く、DIYでも張替えが可能ですが張り替えのプロであればより美しい仕上がりを叶えられます。
強化障子紙の張替えは専門店がおすすめな理由は、
- 障子の張替えについての知識や経験が豊富
- 希望に合った障子紙を選んでもらえる
- プロならではのキレイな仕上がりにしてもらえる
- 時間や手間がかからない
- 張替え用の工具を準備しなくてもいい
- アフターサービスが備わっている
- 失敗のリスクがなく安心
- 障子だけでなく網戸や襖についての相談もできる
張り替え専門店を選ぶ際のポイント
先ほどごお伝えしたように、総合的なことから強化障子紙の張り替えはプロに依頼するのが確実です。しかし、専門店を名乗る悪徳業者も一定数存在するようなので、こちらでは張替え専門店を選ぶ際のポイントを解説していきます。
Point① 見積価格はどういった基準で決まるのか
障子の張り替えの見積り価格は通常1枚1,500円~8,000円程度のところが多い傾向。しかし、作りが複雑な障子(猫間障子など)は張り替えに手間がかかるので、追加料金を取っているところもあるので注意が必要。
Point② お店の評判をSNSの口コミで確認する
店舗名をGoogleなどで検索し、口コミを確認し評価は良いかなどエゴサーチをしてみる。
Pont③ 自宅近くに店舗はあるか
自宅から近い店舗であれば、何かあったときに早急に駆けつけてくれる。
Point④ 張替え後の保証制度の有無
張り替え後30日以内であれば故障など不具合に無償で対処してくれたり、定期点検はしてくれるのかを確認しておく。
Point⑤ 張り替え実績の公開はされているか
お店のホームページに張り替え前と後の写真が掲載されているとイメージがわかりやすいので依頼者は安心できる。
Point⑥ 訪問見積りはで費用を請求されないか
障子は建具のサイズや劣化具合により、金額が異なるので事前見積りが必要。そこで訪問見積りをキャンセルすると出張代などとし、費用を請求してくる業者もいるため注意する。
Point⑤ スタッフの対応やお店の雰囲気はいいか
電話や訪問の際、スタッフの対応は良いかやお店の雰囲気はいいか、臨機応変な対応をしてくれるかなどを確認する。
Point⑥ 自社施工をしている店舗か
自社施工を実施しているお店は、値段が抑えられているだけではなく職人が確かな技術を持っていることが多い。そのため、初めての依頼でも丁寧に対応してくれるので安心して任せられる。
まとめ
今回は強化障子紙の選び方を中心に、特徴やメリット・デメリット・種類などもご紹介しました。
強化障子紙は通常の障子紙に比べると、以下のようなメリットがあります。
- 耐久性が高く破れにくい
- 断熱効果が高い
- 紫外線を防ぐ効果が高い
- 断熱性が高い
- 水拭き可能でお手入れが楽
- コスパが良い
このようなことから強化障子紙は、使用環境や機能性・価格帯などからご自宅の障子にぴったりなものを選ぶことができます。
そして、強化障子紙はDIYでも張り替えができるタイプが多いですが、トータル的なことを考えて張り替え専門店へ依頼するのが確実です。依頼の際は専門店選びのポイントを良く見極め、相性のいい業者選びをすることが大切です。
ペットや小さなお子様がいらっしゃるご家庭はもちろん、張り替え年数を伸ばしたい方や日々のお手入れを楽にしたい方も、ご自宅の障子を強化障子紙に張り替えることを検討してみてください。