日本の伝統的な和室文化に欠かせない襖は『本襖(ほんふすま)』と言い、和室と和室を仕切るための引戸です。
しかし、近年日本の住まいでは和室と洋室が混在する家も非常に増えています。そんな現代の部屋にかかせないのが『戸襖(とぶすま)』。戸襖があることで部屋の雰囲気を作ったり、収納スペースを確保したりできます。
そこで、自分の部屋の襖が戸襖とわかっても、張り替え方法がわからないという人もいるのではないでしょうか?
今回は、戸襖の張り替えについて詳しく解説していきます。
記事の前半では襖紙の種類、後半では張り替え作業についての注意点についてもご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
戸襖(とぶすま)の特徴
まずは、戸襖の特徴をご紹介していきます。
戸襖とは、部屋を仕切る引き戸の一種で、内側に分厚いベニヤ板が使われており、重量があります。戸襖の縁は接着しているので基本的に取り外しはできません。
戸襖は、片面が和風・片面が洋風の場合の部屋に使用されます。
なので、洋室と和室が隣り合う部屋の雰囲気を損なわず違和感なく仕切れるという特徴があります。この場合、和室側には襖紙を張り、洋室側にはクロスや壁紙を張ってそれぞれの部屋に合わせて仕上げられます。
戸襖の張り替えのタイミング
次は、襖の張り替えの5つのタイミングについて詳しく解説していきます。
① 汚れやシミ
襖についた汚れやシミは、掃除の仕方やその種類によっては落とせるケースもあります。
しかし、それが難しくどうしても良くしたいという場合は、張り替えをするしか方法はありません。
② 色褪せ
襖の色が褪せてしまうのは、表面に長年太陽の光が当たるなどで劣化していることが原因です。
色褪せた襖は、雑巾などで拭いて掃除をしようと思っても、多くの場合あっという間に破れてしまいますので張り替えをおすすめします。
③ カビの発生
襖のカビが発生するのは、和室の湿度が高いことが原因です。
カビは気温が20〜30度、湿度60度を超える環境で起こりやすくなります。放置していると、襖の内部までカビが浸食してしまい、張り替えをするしかありません。
④ たるみやシワ
特に紙でできている和紙を襖に貼る場合、水分が残ったままだと和紙が膨張するので、たるみやすくなります。
和紙のたるみは貼りたてのときは避けられませんが、徐々に乾燥し縮んでいきます。
しかし、それ以上経っても改善されない場合は、張り方に原因があるため張り替えもしくは襖の新調することをおすすめします。
また、年月が経過した襖のたるみやシワは、劣化が進んでいるというサインでもあるため、張り替えをお勧めします。
⑤ 剝がれや破れ
襖の剝がれや破れは見栄えがよくないので、気づいたら張り替えをするタイミングと言えるでしょう。
襖紙の種類について
襖紙には、5つの種類があるので、それぞれ説明していきます。
「 織物 」の襖紙
和紙に天然の繊維などを織り込んで、強度を増した襖紙。
和紙の襖紙より丈夫なため、耐久性に優れています。
織り込んである繊維によって普及・中級・高級(上級)の3つのグレードに分別され、麻・絹・木綿などの天然繊維を使用したものは高級品とされます。
また、合成繊維を使ったものは安価でテクスチャーは劣るものの、より高い耐久性があるという特徴があります。
柄は立体的な物が多く、さまざまなデザインのものがあります。近年では、ビニール紙の織物も増加しており、水回りでも使われるようになっています。
「 和紙 」の襖紙
和紙の襖紙は、古くからの定番です。
和紙を使った織物は素材や製造方法が異なる物が多く、4つのランクに分かれているのが特徴です。
下から「新鳥の子(しんとりのこ)」・「上新鳥の子(かみしんとりのこ)」・「鳥の子(とりのこ)」・「本鳥の子(ほんとりのこ)」の順となり、「新鳥の子」から順に質や耐久性・色味・価格が高まっていきます。和紙の襖紙の中で最上級は「本鳥の子(ほんとりのこ)」。
また、和紙を用いた襖紙は、上品な風合いが魅力的で、中でも本鳥の子は職人が手作業で作り上げているのが特徴でもあります。
カラーは白を主要としており、多様な色合いから選択することが可能。そして、色合いだけでなく繊維の細かさや肌ざわり、光沢感もさまざまな種類があります。
また、最近では「モダン襖紙」と言われる和紙も最近は販売されており、人気があります。値段は安価なものから高価なものまでそれぞれなので、予算に合わせて選ぶことをオススメします。
「 シールタイプ 」の襖紙
シールタイプの襖紙は、名前の通り裏面に貼られているシールを剥がして張ります。
織物や和紙の襖紙と比べると、簡単に張り替えができるのが特徴です。なので、枠が外せないタイプの襖でも簡単に張り替えできるのがメリット。
DIYでも使いやすい襖紙のタイプですが、襖の広範囲を張り替えるときはズレやシワを避けるために、数名での作業をすることが必要になります。
「 アイロンタイプ 」の襖紙
アイロンで貼るタイプの襖紙は、熱で接着剤を溶かして戸襖に張ります。簡単に襖の張り替えができるので、DIYをするときに便利です。
熱を加えて接着させることから、発泡スチロールでできている襖に使用することはできません。また、水回りで使われているビニールタイプの襖紙にも使用できません。よって、アイロンで貼るタイプの襖紙は、使用できる場所が限られます。
アイロンタイプは、標準的な襖のサイズ2枚分で販売されていることが多くデザインもさまざまなほか、価格がお手頃なのも魅力のひとつ。気軽に貼ることができるので、簡単に部屋の雰囲気を変えることができます。
「 のりタイプ 」の襖紙
のりで貼るタイプの襖紙は、両面に薄くのりがついた状態で販売されており、のりが付着している面を水で濡らすことで張り替えができます。
簡単に張れるのがメリットですが、アイロンタイプと同じで場所を選ぶタイプになるので、戸襖の張り替えをDIYする際は注意しましょう。
戸襖の張り替え方
ここからは、戸襖の張り替えの際に準備するものと、張り替えの手順について解説していきます。
準備するもの
- 定規・カッター・ハサミなど刃物類
- ブラシ・ヘラ
- 押さえローラー
- のり
- 雑巾・バケツ
- カナヅチ
戸襖の張り替えの際に必要なものは上記の通りです。
いずれもホームセンターで購入可能なものばかりで、費用もそこまでかかりません。事前に準備しておきましょう。
襖紙の張り替えの手順
① 縁・引手を外す
まずは縁と引手を外していきます。万が一、備え付けの引手がのり止めの場合は、こじ起こして外しましょう。しかし、木の引手は力を入れすぎると割れやすいので注意してください。
取り外しができたら、新しく取り付ける引手のサイズが合っているかどうかを確認するために比較します。また、襖の順番が後からでも分かるように縁に番号をメモしておきましょう。
➁ 2種類の「のり」を作る
縁・引手を外し終わったら、薄いのりと濃いのりの2種類を作ります。
平たい容器を用意し、容器の中でのりを溶きます。薄いのりは茶ちり紙や襖紙の中央につけ、濃いのりは襖紙の角につけていきます。そのため、のりは2種類にわけて準備しましょう。
③ 茶ちり紙を貼る
のりを作り終えたら、茶ちり紙を貼りましょう。茶ちり紙は襖紙の柄や色が濃い部分に貼ります。襖紙に柄が浮き出てこない場合や、厚みのある襖紙を使用する際は茶ちり紙を貼る必要はありません。茶ちり紙を貼る際は、貼る場所がどんな素材なのかをしっかりと確認し、見極めましょう。
④ 襖紙を切り取る
襖紙を切るときは、戸襖の上に襖紙を広げたまま行いましょう。実際に、広げたまま裁断することで、大きさや長さが違うなどのミスをなくすことができます。
また、襖紙を切り取る際は、少なくとも戸襖より5〜10㎜ほど襖紙に余裕をもたせることがポイントです。サイズを決めたら襖紙がずれないように押さえつけて目印をつけ、カッターで裁断していきましょう。
⑤ 襖を貼り端切れをカットする
襖紙の切り取り後、襖紙を貼り端切れをカットしていきます。
カットするとき、隅の部分に定規やヘラを当てると襖紙が固定されるので、動かず切りやすくなります。
襖紙を切る際は、カッターを上手に使えると簡単にできるようになります。そのため、初めての人はカッターで紙をきれいに切ることに慣れてから作業を行いましょう。
⑥ 隅を押さえる
カットする作業が終わったら、隅を押さえる作業をしていきます。襖紙の切れ端を隅にのせ、縁の内側に巻き込み、爪で押さえ込んで張っていきましょう。
早く擦ると摩擦で火傷をする可能性があるため、注意が必要です。また、隅を押さえることを適当にしてしまうと、襖紙が剥がれ落ちる原因にもなりかねません。
⑦ 引手を取り付ける
最後に引手を取り付けていきます。
引手を取り付ける際は、襖紙を八つ切りにくり抜き、新しい引手を入れます。接着剤を引手の裏側に塗り、くり抜いたところにはめ込みます。襖紙が完全に乾き、引手も動かなくなれば完成です。
張り替えの際の注意点
最後に、戸襖の張り替えの際の注意点をお伝えしていきます。
戸襖の張り替えのときに注意することは以下の通りです。
- クロス側はしっかりと張る
- 角はしっかりと切り取る
- 襖紙が縮むことを考えて張る
クロス側は襖紙と違い、繊維が縮みにくくなっています。なので、戸襖を張り替える時は、クロス側の中央部分から外側に向かい、しっかりと張る必要があります。その際、内側に空気が残らないようにするため、ヘラを使って空気もいっぺんに押し出してあげましょう。
また、角をしっかりとカットせずに張ってしまうと、見栄えが悪くなります。この理由は、戸襖は本襖と異なり外枠に隠れることなく角が見えてしまうから。よって、角を切り取る際は定規やヘラなどで角を押さえながら、カッターできれいにカットすることが不可欠です。
そして、戸襖が縮むことを考えた上で張り替え作業を行いましょう。襖紙は乾いていくうちに、外側から内側に向かって縮んでいく習性があります。このことを考慮せずに全体をしっかりと張ってしまうと縮みが生じた際、襖紙にシワができてしまい見た目が良くありません。それゆえ、シワを防止するために襖紙が縮むこと見通し、シワを少し残して張りましょう。
まとめ
今回は、戸襖の張り替えの手順についての解説と、張り替えの際に必要なものや注意点などもご紹介しました。
戸襖の張り替え作業は、仕上がり後の見た目がとても大事になるので、ひとつひとつの作業を丁寧に行うことが大切です。本襖と違い比較的自分でも簡単に張り替えができますが、仕上がりを確実にきれいにしたいのであれば、業者に依頼するのもひとつの手かもしれません。
また、張り替えのタイミングは一般的に10年と言われていますが、汚れが気になったり部屋の雰囲気を変えたりしたいときが、おすすめのタイミングと言えるでしょう。
自分の部屋の戸襖の張り替えを考えている人はぜひ参考にしてみてください。