【昔懐かしい「鎖どい」を徹底解説】役割やデザイン、魅力・素材・選び方までご紹介!

普段何気なく目にする雨どいは、当たり前のように日本の建築物に取り付けてある建具ですが、住宅において欠かすことのできない部材です。

雨どいは屋根に降り注ぐ雨水をスムーズに排水する役割があり、もしなかった場合さまざまなデメリットが発生してしまいます。前回の記事で雨どいの種類についてご紹介しましたが、今回はその中の「鎖(くさりどい)」について詳しく解説していきます。

鎖どいはほかの雨どいと違い、雨水の流れを目や耳で直接感じることができるとても風情があり魅力あふれる建材です。

この記事では鎖どいの歴史から素材・種類・選び方などについて詳しく解説していきます。

目次

鎖どいとは?

鎖どいとは雨どいの一種ですが、軒先から地面に向かって吊り下げてある鎖状の雨どいのことを指します。

鎖どいは一般住宅や神社・お寺などで主に使用されています。しかし現在は日本家屋が減ってきているため、一般住宅で目にする機会は少なくなっています。

鎖どいは、通常の雨どいと同じように屋根からの雨水を地面に排水してくれます。

雨水が直接地面に落ちるのを防ぐので、家の基礎へのダメージを軽減したり外壁が汚れて景観が失われないようにする利点もあります。

また、軒が深いところにあっても雨水が地面に流れ落ちるまでの経路が単純なので、シンプルに排水ができるため、雨水が外壁に伝わるのを最小限に抑えられるので建物の腐食や劣化を防いでくれます。

近年の雨どいは筒状になっているので雨水の流れを見ることはできませんが、鎖どいは雨水が鎖に流れる様子を目で見て楽しむことができるのも特徴のひとつ。さらに、雨水が流れ落ちる音も聞くことができるため、視覚的にも聴覚的にも趣や情緒を感じることができます。

鎖どいの由来は日本だと言われていますが、雨水の流れを目や耳で楽しめるのは日本ならではの魅力や風情と言えるのではないでしょうか。

鎖どいの歴史について

鎖どいの発祥は日本だと言われており、日本伝統の建築様式「数寄屋造り(すきやづくり)」に使われたことが始まりのようです。

数寄屋造りとは?
母屋とは別の”小規模な茶室“のことで安土桃山時代に登場し、この小さな茶座敷が「数寄屋(すきや)」と呼ばれていました。当時茶人たちは豪華で華美な装飾を好んでいませんでした。なので、格式が低く自由で素朴なデザインを用いて数寄屋造りが作られていたそうです。

鎖どいも同じようにシンプルな素材が用いられ、始めは「棕櫚(しゅろ)」という植物の表皮の繊維を縄状に編んだ棕櫚縄(しゅろなわ)で作られており、竹や木で作られた横どいに雨水を伝わらせ鎖どいとして使用されていました。

江戸時代までの日本の住宅はかやぶき屋根の家が多く、一か所に集中して雨水が流れ落ちるということがなかったので、雨どいは一般的にあまり使用されることはなかったそうです。

しかし、江戸時代以降になると東京を中心とした都市部の人口が増加し、住宅が密集するようになりました。

すると、雨どいがないことで雨水が原因で隣家とトラブルが起こるようになりました。またかやぶき屋根の家はとても燃えやすいため、防火対策として瓦屋根が推奨されるようになり、それと同時に雨どいも一般家庭に普及していったようです。

こうして鎖どいも需要が高まるにつれ、さまざまな素材やデザインが用いられ進化を遂げていきました。

現在日本では伝統ある建築物に鎖どいが使用されています。

実際に棕櫚縄が使われている鎖どいは現存しており、「江戸東京たてもの園」にある「三井八郎右衛門邸(みつはちろうえもんてい)」の玄関の横どいに使われており、当時の情景を目で見て感じることができます。

【棕櫚(しゅろ)】

【江戸東京たてもの園 三井八郎右衛門邸】

引用元:三井広報委員会様 三井八郎右衞門邸_移築・復元された三井八郎右衞門邸

鎖どいのメリット・デメリット

鎖どいにも通常の雨どいのようにメリットやデメリットがあるので解説していきます。

「鎖どい」のメリット

地面へのダメージを軽減する

雨水が屋根から直接地面に落ちると、その場所へのダメージが積み重なり地面が削れるなどのダメージが発生します。
鎖どいが設置してあることで、屋根から落ちる雨水が鎖を伝って地上に落ちるため、地面へのダメージを減らしてくれます。

雨水が建物に当たりにくくなる

鎖どいがないと、雨水は直に地面へ落ちていくので水たまりができ、泥が跳ねて建物の景観を失ってしまいます。鎖どいが設置してあることで雨水が直接外壁に伝わるのを防げ、建物の外観をキレイにキープできます。

日本の風情を目で見て楽しめる

鎖どいの一番のメリットは、雨水の流れを目で見て風情を楽しめることではないでしょうか。つい川や滝の流れ、噴水の水の動きなどを時間を忘れて見入ってしまうことがあるという方もいるかと思いますが、水の流れはストレスを緩和し、視覚的・聴覚的に癒し効果があると言われています。

鎖どいから流れる雨水は、時間を忘れて眺めてしまうほど趣のある日本の情景だと言えます。

「鎖どい」のデメリット

通常の雨どいより雨水の許容量が少ない

鎖どいは雨水を鎖に伝わせて徐々に流す形式の雨どいなので、大量の雨水を一気に地面へ流すことが苦手です。
そのため、ゲリラ豪雨などの大雨の際には排水できる容量を超えて溢れ出してしまい、雨水が直に地面に落ちてしまう恐れがあります。

雨水が周囲に飛ぶことがある

鎖どいは鎖の連結部分から水が飛び散ることがあります。特に風が強いときや大雨で雨水が大量に流れていると、周囲に飛散する可能性が高くなります。よって鎖どいを使用する場合は、雨水が飛び散ってもあまり問題がない場所に設置するのがいいかもしれません。

通常の雨どいより高価

筒状になっている通常の雨どいは、1本のパイプが地面に向かってつなげられて設置されていますが、鎖どいはさまざまなパーツがたくさん組み合わさってできています。

よってパーツの数も少なく、設置費用は鎖どいのほうが高価になります。

こまめなメンテナンスが必要

鎖どいは配管の中に水が通るというシステムではないので、落ち葉などのゴミが溜まりやすく、こまめな掃除が必要です。

ゴミが詰まると雨水が溢れ出してしまうため、美しい風情が台無しになってしまうことも。したがって、メンテナンス頻度が高まるので落ち葉などが大量に集まるところへの取り付けは避けたほうが無難かもしれません。

鎖どいの素材

鎖どいはさまざまな種類の素材から作られています。こちらでは、鎖どいの素材を種類ごとに解説していきます。

素材:プラスチック

プラスチックは軽くて丈夫な素材なので、日常的にありとあらゆるものに使用されています。

プラスチック製の鎖どいは低価格なのがメリットで、見た目は金属製のものとさほど変わらないものもあります。

しかし、金属製の鎖どいと比較すると耐久性が劣り、使われているプラスチックによっては紫外線の影響を受けやすく劣化しやすいものもあります。

素材:ステンレス

ステンレスはシンクや食器・ナイフ・フォークなどに使われている素材です。ステンレス製の鎖どいのメリットは、耐久性が強いところ。

また、硬度が高いうえ錆びにくく、簡単に破損したり変形したりしないという特徴もあります。

とにかく、耐久性が高い鎖どいが欲しいという方にはステンレス製がおすすめですが、ステンレスの中でも表面の光沢が強いものは、物が当たると細かい傷がつきやすいというデメリットもあるので注意が必要です。

素材:銅

銅は5円や10円に使われている素材です。銅製の鎖どいは腐食や錆びに強く風情があるのが特徴です。

新しい銅製の鎖どいはキレイな赤銅色をしていますが、年月が経つと表面の色が変化していきます。

それは、空気に触れたり水に触れることで緑青(ろくしょう)と呼ばれる錆が生じるのが原因です。

最初の光沢感は失われてしまいますが、緑青が出ることでだんだんと風情ある景観になっていきます。

素材:真鍮(しんちゅう)

真鍮とは銅と亜鉛を合わせた合金のことで、さまざまな物に使われている素材です。

真鍮でできているものには、仏具や金管楽器などがあります。

真鍮製の鎖どいは、外観の美しさと強度が優れているところ。

銅に性質が似ているので、真鍮も経年により緑青が生じます。

とはいえ、緑青は発生しても金属素材のため耐久性は高いので、劣化してボロボロになるという可能性は低いと言えます。

鎖どいのデザインの紹介

鎖どいにはおしゃれなデザインのものがいろいろあるので、こちらでご紹介していきます。

Type①:リング型

リング型の鎖どいは、名前の由来になったリングを重ねたものになり、古くからある形です。

これはリング形状の鎖が結びついて1本の鎖になっており、雨水はリングの表面を伝わって落ちていきます。

リング型の鎖どいは、カップタイプの鎖どいと比べると周囲に雨水が飛び散りやすいのがデメリット。

よって、多少飛散してもかまわない場所や雨量の少ない場所への設置がおすすめです。

エレガントなデザインで和洋どちらの建物でも合わせやすく、雨が降らない日でも建物を美しく彩ってくれます。

Type②:カップ型

カップタイプの鎖どいは、底が抜けたカップが鎖に設置してあるので雨水がカップの内側を流れていくのが特徴です。

雨水を内側で受け止めることができるので、周囲への飛散もあまりありません。カップ型のデザインはいくつかありますのでご紹介していきます。

商品例:カップ型 鳥

ひとつひとつのカップに鳥がついている鎖どいは、レトロで日本的な風情を楽しみたい方におすすめです。

鳥には平和や癒しなどのイメージがありますので、見ているだけでもリラックスできるようなデザインの鎖どいです。

商品例:チューリップ型

チューリップ型のカップのついた鎖どいは、レトロでありながら可愛らしい雰囲気を出してくれます。

軒から流れ落ちる雨水を、チューリップ型により優しく優雅な情景にしてくれます。

商品例:筒形

筒型の鎖どいはスタイリッシュでモダンな洗練されたムードがあります。

昔ながらの日本家屋より、洋風の住宅に合わせやすいデザインではないでしょうか。

適した「鎖どい」を選ぶ時のポイント

鎖どいを選ぶ際は、いくつかポイントがありますので解説していきます。

Point①:耐久性

好きな鎖どいを長く楽しみたいのであれば、耐久性に優れている素材の鎖どいを選ぶのがおすすめです。

耐久性が高い鎖どいにはステンレス・真鍮・銅などの金属製であれば、腐食や錆びなどを避け長い間使うことができます。

Point②:外観

日本家屋に合う鎖どいをお探しの方は、月日が経過すると共に現れる緑青(ろくしょう)が出てくる素材の鎖どいをおすすめします。

真鍮や銅でできている鎖どいは、空気や水に触れると変色し青緑色の緑青と呼ばれる錆が出てくるため、これが日本家屋の雰囲気と調和します。

経年劣化と共に風情ある雰囲気を楽しむことができるのではないでしょうか。

Point③:値段

お手頃な価格の鎖どいをお求めの方は、プラスチック製の鎖どいを推奨します。

プラスチック製でも一目では金属と変わらないような見た目の鎖どいもあるため、情景を大きく乱すことなく使うことができます。

また、予算に余裕があり高級感・重厚感・耐久性などを重視したい場合は金属製の鎖どいが適しています。

鎖どいの設置は専門店へ依頼がおすすめ

鎖どいの設置は、専門的な技術を要するので業者に依頼をするのがおすすめです。専門業者に依頼をおすすめする理由は、

  • 自宅に合う鎖どいの相談ができる
  • 正しい取り付けをしてもらえる
  • 作業に手間や時間がかからない
  • 失敗のリスクがなく安心して作業を任せられる
  • 高いところの作業もしてくれるので安全
  • アフターサービスや無料保証がある店舗もある

などがあります。

また、「費用がかかる」「悪徳業者が一定数存在する」などのデメリットもありますが、総合的な面で考えると専門店に依頼をしたほうがコスパはいいと言えます。

専門店を選ぶ際のポイント

鎖どいの取り付けや修理交換は、専門店に依頼するのが確実です。

こちらでは、相性の良い専門店の種類やポイントをまとめましたので、業者選びの参考にしてみてください。

リフォーム会社

リフォーム会社は新築工事は引き受けておらず、住宅や建物のリフォームやリノベーションを得意とする会社です。現在のリノベーションブームは、リフォーム会社が牽引してきたと言っても過言ではありません。

特に屋根や外壁の外観を専門とするリフォーム会社であれば、安心して雨どいの取り付けも任せられます。

ハウスメーカー

ハウスメーカーは、住宅に関する知識や工事経験が豊富な会社です。現在のお家を建てたハウスメーカーに依頼をするのも手段のひとつ。

信頼度は高いので、雨どいの設置や修理などを安心して任せることができますが、自社施工を行っていない店舗が多いので費用は割高になる可能性があります。

工務店

工務店は住宅全てに特化しており、高い専門知識があるので悪徳業者も少なく、安心して依頼をすることができます。

企業規模が小さく地域密着型の店舗が多いため、職人に細かな希望を伝えられるところがメリットになります。なので腕のいい職人に当たればコスパはとても良いですが、自社施工でない店舗の場合は高額になることもあるので注意が必要です。

屋根工事専門店

名前の通り屋根の修理を専門とした会社です。屋根についての知識や工事などの経験が豊富なので、小さな修理でも気軽に依頼できます。

また、自社施工のところが多いため費用も抑えられ、ほかの会社では見つけにくいような細かな雨漏りの原因も見つけてくれるかもしれません。

一方で、大手ハウスメーカーと比較するとアフターサービスや保証制度が整っていない場合もあるので、口コミを良く確認して良い会社か見極めることが大切です。

塗装業社

塗装業者は外壁の塗装を専門としますが、雨どいの設置や修理・交換を受け付けている会社もあるようです。

しかし、あくまでも塗装に特化している会社なので、依頼をすると下請け会社が請け負うことになり高額になる可能性があります。なので、塗装業者への依頼はあまりおすすめではありません。

ホームセンター

ホームセンターのいいところは、いつものお買い物のついでに気軽に相談ができるところです。雨どいの修理などを行え体制が整っているところもありますが、どのような施工会社が請け負うのかがわかりません。

また、職人も選べないので技術や商品の選択肢に差が出てしまうこともあるようです。

まとめ

今回は、雨どいの一種「鎖どい」について、素材・デザイン・選び方などを詳しく解説しました。鎖どいは日本発祥の雨どいで、昔ながらの日本家屋や神社・お寺などで目にする鎖状の雨どいです。

一般的な筒状の雨どいと同じように屋根に降る雨水を排水することを役割としますが、雨水の流れを目で見て確認することができるため、日本ならではの趣を楽しむことができるのも魅力のひとつです。

また、鎖どいの設置は専門的なスキルを必要とするため、専門店に依頼することをおすすめします。
その際は悪徳業者に騙されることなく、相性の良い専門業者を選ぶことが大切です。

雨の日は気分が憂鬱になりやすいですが、趣があるおしゃれな鎖どいで雨水の流れをぜひ楽しんでみてはいかがでしょうか。

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