近年、日本の住宅では洋室がメインの建物が増えているため、障子を見る機会がかなり減ってしまいました。
障子とは健具のひとつで、大きな木の枠に縦横多くの細い桟(さん)をつけ、紙を貼ったものになります。おじいちゃんやおばあちゃんが住んでいるような、古い家屋で障子は見かけたことがあるかと思います。
障子には昔ながらの日本の伝統的な和室文化の良いところがたくさんございますので、これからマイホームを購入し、自宅に和室を作る予定の方にもおすすめの記事になります。
今回は障子にはさまざまな種類がありますが、「雪見障子(ゆきみしょうじ)」について特徴や種類・張り替え方法などを詳しく解説していきます。
雪見障子とは?
雪見障子とは、障子の下側にガラスがはめられた障子のことです。ガラス部分に上下にスライドする小障子が組み込まれています。
その名の通り、室内にいながらにして外に積もる庭の雪を眺めることができる障子です。
普通の障子は外の様子を見るためには開ける必要がありますが、雪見障子は開ける必要はなくいつでも小障子のガラス部分から外の景色を見ることができます。
雪見障子の特徴
昔ながらの雪見障子のメリット・デメリットなどを表にまとめて分かりやすくしてみました。
メリット | ・窓を開けなくても外の景色が見える ・障子部分で日差しを和らげてくれる ・落ち着きや癒しを感じられる ・空気が和紙を通過する際空気中の異物をろ過してくれる ・昼夜問わず外からの視線を遮断できる ・おしゃれで日本の和室文化の趣を感じられる | ・ガラス部分から適度に光を取り入れられる
デメリット | ・ガラスが割れたときに危険 ・メンテナンスが難しい ・ガラス部分は障子紙に比べ断熱性が低くなる ・桟にほこりがたまりやすい ・安価な障子紙の場合、障子紙が破れやすい | ・ガラスの重みが開閉の妨げになる
素材 | ・障子紙(普通紙・和紙など) ・木材(ヒノキが使用されていることが多い) | ・ガラス
張り替え年数 | ※障子紙の素材により大きく異なります | ・3~5年に1回張り替えるのが目安
お手入れ方法 | ・枠は雑巾を濡らし固く絞ってから拭く(※水分が残らないようにする) ・毎日のお手入れははたきなどを使いほこりを取ればOK | ・ガラスが汚れたら柔らかい布にガラスクリーナーをつけて優しく拭く
障子の種類
障子にはいくつか種類があります。
こちらでは障子の種類をそれぞれご紹介していきます。
荒組障子(あらぐみしょうじ)
荒組障子は組子の数を少なくした障子。組子の基本設計となる、縦と横の組子の数が少なくなっています。
木造住宅などの一般家庭でよく使用されており、「大荒組障子(おおあらくみしょうじ)」や「荒間障子(あらましょうじ)」と呼ばれることも。
普通の障子よりもすっきりとしたデザインになるので、モダンな雰囲気を演出してくれます。
横繁障子(よこしげしょうじ)
横繁障子は、横組障子を基本として横に組子を細かく入れた障子のことを指します。
茶室や床の間の書院などで多く使われています。また、関東地方で多く好まれており、ガラスや板と組み合わせて使うこともあります。
荒組障子よりも桟が細かいので、外の景色を細かいグリッドで見せることができるのも特徴のひとつです。
縦繁障子(たてしげしょうじ)
縦繁障子は、縦方向に組子を細かく入れたもののことです。
関西では主流の障子で、ひとつの組子が縦に長いため、障子全体がスマートに見えるのが特徴です。
玄関の引戸などで使われていることが多く、一度は目にしたことがあるかと思います。
腰付障子(こしつきしょうじ)
腰付障子とは、障子の下の部分が板張りになっている障子。「腰障子(こししょうじ)」と呼ばれることもあります。紙と組子だけの障子よりも、板で構造を増強できるのが特徴のひとつです。
この板の部分を腰板(こしいた)と言い、腰板の高いものを腰高障子(こしだかしょうじ)と言います。以前は風雨を避けるために腰高の障子が一般的でしたが、部屋での間仕切りが主流となるにつれ、高い腰板は不要になったと言われています。
猫間障子(ねこましょうじ)
猫間障子とは、雪見障子のように一部にガラスがはめ込まれていて、ガラスの前に上下、もしくは左右にスライドする小さな障子が組み込まれた障子です。
本来は、障子が閉まっていても猫が出入りすることを目的として作られており、ガラスははめ込まれていなかったと言われています。現代では家屋の気密性を考えると差支えがあり、呼び名だけが残ったそうです。
雪見障子の構造
雪見障子の構造は一般的な障子と比較すると複雑です。普段はガラスを閉じて一般的な障子と同じ使用方法になりますが、形状が異なるため張り替え時には上手に外すことができないかもしれません。
また、雪見障子の小障子の桟の溝には、このようなバネが片方の溝に使用されていることが多く、これは小障子のずり落ちを防止するためにつけられています。
雪見障子の小障子を下げた画像
雪見障子の小障子を上げた画像
雪見障子の構造の各呼び名について解説していきますので、上の画像と照らし合わせてご覧ください。
名称 | 各部分の詳細 |
上桟(かみざん) | 障子の一番上の部分にある桟のこと |
組子(くみこ) | 上下の桟と框の間に位置し、縦横に組み込まれた細い格子 |
框(かまち) | 両サイドにある縦の枠、縦ざん(たてざん)とも呼ばれる |
中桟(なかざん) | 上桟と下桟の間にある桟のこと |
腰板(こしいた) | 障子の下の部分にはめ込まれる板材のこと |
下桟(しもざん) | 障子の一番下の部分にある桟のこと |
小障子(こしょうじ) | 障子の下の部分がガラスになっている部分のこと |
このように雪見障子は構造がより複雑になり自分での張り替えは困難になります。それはガラス部分の小障子がDIYをする際、どう外していいかわからず悪戦苦闘してしまう方が多いからです。
そのような場合は張り替え専門店に任せるのも、ひとつの方法と言えます。
雪見障子の張り替え依頼のパターン
雪見障子は、自分での張り替えが難しいので、こちらではよくある専門店への依頼パターンを3選ご紹介します。また、DIYで雪見障子を張り替える簡単なやり方もご紹介します。
- 雪見障子のガラスをアクリル板に変えたい
アクリル板はガラスよりも強度があるので、小さなお子様・高齢者・ペットがいるご家庭におすすめです。
しかしながら、面積が広すぎると曲がってしまったり、耐熱性はガラスに比べると弱くなるというデメリットがあります。 - 障子紙を張り替えたい
・障子紙が破れてしまったり日焼けしているので交換したい
・寒いので断熱性の障子紙に張り替えて断熱したい
このようなお悩みの方におすすめなのは「強化紙」や「ワーロン紙」に変えることで、子供のいたずらやペットの引っ掻きにも耐えることができて、長く使えるというメリットがあります。
一方、通気性や吸湿性といった紙の特性がなくなるため、障子の良さでもある通気性が悪くなるデメリットがあります。 - 雪見障子の小障子(雪見障子のガラス部分)の破損や交換・一部補修
雪見障子のガラス部分が経年劣化によって古くなり動きが悪い、また一部が壊れたので交換したいというのもよくあるパターンです。
ガラス部分は自分で修理しようとすると、割れたりして危険なので専門店に依頼しましょう。このような場合は、業者がご自宅に訪問し見積に行った際に状態を確認します。このような場合は、全部交換となる場合が多いことから、やはりプロにお願いするのが確実と言えます。さらに、雪見障子は小障子のずり落ち防止に板バネが使用されています。このバネが経年劣化してしまうと滑り落ちてしまうことから交換となり、同時に張り替えを依頼するというパターンもあります。
【雪見障子を自分で張り替える方法】
雪見障子を自分で張り替える手順を簡単にご紹介します。
雪見障子には上げたときにずれ落ちないように、バネが桟の溝に仕込んであります。
このバネは桟の溝の深い方についており、外すのには意外とコツが必要です。
まず、この小障子を外すポイントからご紹介します。
- まず、小障子がはまっている、左右の枠を見てどちらの溝が深いかを確認します。
- 小障子を少し上に上げ、1で確認した溝が深い方にしっかりと押し付けると、バネが伸び、障子が桟の溝に深く入ります。
- 反対側の溝から障子が外れ、取り外すことができます
続いて、障子紙の張り替えをしていきます。
貼り替えの手順は以下の通り。(障子がのりで貼りつけてあるタイプの場合)
- 枠にそって水をかけたら、5分ほど時間を置く
- 糊をふやかしたら障子紙を端から慎重に剥がしていく
- 障子紙を剥がしたら、枠を拭き取ってキレイにする
- 風通しの良い場所に置き乾燥させる
- 枠に糊をつける
- 障子紙をゆっくり広げ枠にそって貼り付けていく
- 指を使い枠にそってなぞり、たるみをなくす
- はみ出した障子紙をカットする
上記のように、障子紙を貼る際もこのようにたくさんの工程があることから、自分での張り替えは難しく時間がかかってしまいます。
最後に、小障子の取り付け方について解説します。
- はじめに、左右の枠を見て、どちらの溝が深いかを確認しておきます。
- 小障子を持ったら、溝の深い方にぎゅっとしっかり押し付けます。
- 反対側の溝に、小障子をはめ込みます
- 最後に、小障子の開閉がスムーズかを確認します
雪見障子の張り替えは、ご自身で張り替えをしてみたがバネの部分がうまくできなかったり、小障子などがあるため張り替えに時間と手間がかかるため面倒に感じて、私たち張り替え専門店に依頼するというパターンもよくございます。
また、小障子の溝の深さはそれぞれ微妙に違うため、適したバネを選ぶのも大変です。
このような手間や時間をかけて張り替えをすることを考えると、やはり張り替え専門店などのプロに張り替えをお任せするのがベストと言えるかもしれません。
雪見障子のメンテナンス方法
雪見障子は他の障子と違い、ガラス部分があるので少しメンテナンス方法が違います。
日頃のメンテナンス方法は、障子紙の部分は一般的な障子と同じように、桟に溜まったほこりをはたきなどでこまめに取るようにしましょう。濡れたスポンジを使うと色落ちやシミの原因になるので、乾いた布などを使うのがおすすめです。
ガラス部分の汚れは柔らかい布にガラスクリーナーをつけて拭きます。ガラスクリーナーをダイレクトにかけると、桟や障子紙にクリーナーがついてしまい、シミになってしまうこともあります。クリーナーは必ず布にスプレーしてから拭くようにしましょう。
また、ガラス部分は割れて危険な場合があるので、ガラスの代わりにアクリル板などの代替素材を選ぶこともひとつの雪障子を長く大切に使うための方法でもあります。
アクリル板はガラスと比較すると軽く、割れにくいという特性があります。
さらに透明度も高いので、見た目の美しさを失うことなく雪見障子としての役割を果たしてくれます。
ガラス部分をアクリル板に変えるなどは価格や扱いやすさなどを考慮したうえで、各自のライフスタイルに適した素材を選択してください。
雪見障子の張り替えは専門店に依頼するのがおすすめ
雪見障子の張り替えを低コストで抑えるために、自分で張り替えをしようとする人もいるかと思います。
しかし、先ほども申し上げたように作業のトータル的なことを考えると障子の張り替え専門店に依頼するのがおすすめです。
雪見障子の張り替えが自分では難しい理由は
- 小障子の取り外しが難しい
- 障子の張り替え枚数が多い
- 時間や手間がかかる
- ガラスが割れる可能性があるので危険
- 枠の採寸が難しい
など、上記のようなことが考えられます。
また、張り替え専門店に依頼をおすすめする理由として
- プロならではのキレイな仕上がり
- 道具を用意しなくてもいい
- アフターサービスが充実している
- DIYより時間がかからない
- 障子についてわからないことに的確に答えてくれる
- トラブルをすぐに解決してくれる
など、上記のようなことがあげられます。
まとめ
今回は、雪見障子の特徴や構造・張り替えなどについて詳しくご紹介しました。
雪見障子は庭園に積もる雪をいつでも眺められる昔ながらの障子です。
家にあるだけで風情のある和室を演出してくれます。ガラス部分から外の光を取り込んでくれたり、日差しを和らげてくれたりとメリットがたくさんあります。
一方で、雪見障子をDIYでの張り替えするのは構造が複雑で工程もたくさんあるためあまりおすすめできません。
プロに任せることで、張り替える時間や労力だけでなく失敗のリスクも回避することが十分にできます。
自宅に雪見障子を取り入れたいと思っている人や、張り替えをしたいと思っている方がいらっしゃいましたらぜひこちらの記事を参考にして頂けたら幸いです。